【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」
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61: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/21(日) 00:12:13.05 ID:9pse+9K10
都心から車で数十分。
都内ではあるが、郊外のような落ち着いた雰囲気の街並みの中に存在する撮影スタジオに入る。
すでにスタッフの大部分がスタンバイしていた。三人に楽屋で準備をさせているあいだ、俺はスタジオの全体を観察しておく。
よく芸能ニュースでみるような、スクリーンをバックにライティングが整えられた広めの写真スタジオが中心だが、室内はログハウスのように温かみのある木目調のデザインで、ハウススタジオとしても機能する。
ディレクターズチェアとテーブルが置かれたあたりに、買っておいたドリンク類と資料を配置した。
動線や小道具の位置もざっと確認する。
特に気になる点はない。これまで同行した撮影現場と同程度の規模だ。
「モデルさん準備OKでーす!」
楽屋の扉が開き、スタイリストの声がスタジオ内に響いた。メイクの済んだ三人がこちらに歩いてくる。
「よろしくおねがいしまーす!」
朗らかに挨拶したのは春菜だった。シャツとスカートでカジュアルにまとめている。
ファッションとしては素朴だが、春菜の気取らない雰囲気によくマッチしている。
ほかの二人がこの格好だったならむしろ不自然に映るだろう。
「よ、よろしくおねがいするっス……」
その後ろから背を丸めて出てきたのは比奈だ。まだ人から見られるということに慣れていないらしい。
俺がジェスチャーで姿勢を正すよう伝えると、気まずそうに少し目を細めてから、背筋を伸ばした。
比奈は暖色系のニットとフレアスカートで、春菜よりもやわらかい雰囲気に仕上げられている。
オレンジのセルフレームの眼鏡をかけているが、あれはスタイリストではなく春菜が用意したのだろうか。
「ふふ、計算の通りね」
最後に出てきたのはマキノだ。学校の制服のようなイメージのブレザーとスカートだった。
いったいなにを計算していたのかはわからないが、スタイル、姿勢ともに整っているマキノに着せれば、学生服は着る人物の美しさを浮き立たせるものであるということが自然と理解できる。
「三者三様だな」
「でも全員眼鏡です!」
俺の感想にかぶせるように、春菜が得意げに眼鏡のテンプルをつまんだ。
「スタジオのリア充っぽい雰囲気……やっぱりまだ慣れないっスね」
比奈はあたりを見渡している。
「俺だって慣れないさ、非日常だからな。緊張するのが普通だろう。春菜やマキノだってそうじゃないか?」
俺が話を振ると、二人はそれぞれに少し考える。
「そう、かもしれないわね」マキノはスクリーンのほうを見ながら言った。「面白い分析だと思うわ。どんなに事前にリサーチしても、完全に普段と同じようには過ごせない。ライブと同じね」
「私も……実はまだ、慣れないです」
春菜が恥ずかしそうに笑う。
「そういうもんっスかね……」
比奈が苦笑いした。これで多少緊張がほぐれたならよいのだが。
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