【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」
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50: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/14(日) 12:15:23.74 ID:gwN8ecrL0
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 それから、ヒーローはシナリオ通りに悪役を退け、ショーは事故もなく終了となった。
 終了直後からのヒーローとの握手会で形成された長蛇の列もようやく短くなり、人でごった返していたイベントスペースは少しずつ落ち着きを取り戻していく。

「よろしくおねがいしまーす!」

 茜はわずかに残った風船を配っている。
 こんなに必要なのかと思うほどに風船は大量に用意されていたが、あとは茜の手元にある数個で終わりだ。
 すぐに風船は最後のひとつとなり、茜の役割も終わった。

「おわりました!」

 茜はすがすがしい顔でそう言った。
 俺は用意していたドリンクを茜に渡す。
 茜は目を丸くしていたが「ありがとうございます!」と言い一礼すると、ドリンクを受け取って口に運んだ。
 そのときだった。

「ぁさん……」

 かすれ声が聞こえたような気がして、俺は茜を見る。
 茜もまたこちらを見ていた。お互いがお互いの発した声だと勘違いしたようだ。
 その直後、同時に二人の視線は足元へ。

 風船を持った小さな男の子が、俺と茜の服の裾をつまんでべそをかいていた。

「おかあさん……どこぉ?」

 目に涙をためて、その子どもは茜にたずねる。

「……迷子か」

 茜はすぐに子どもの前にしゃがみこみ、安心させるように頭を撫でてやっていた。

「どうしましょう、お母さんをさがしましょうか?」

「いや、こちらが動くとかえって混乱する。スタッフテントに連れて行って、ショッピングモール側の担当者に話してアナウンスを入れてもらおう」

「わかりました! じゃあぼく、お姉さんたちといっしょに行って、お母さんが来るまでいっしょに待っていましょう!」

 茜がそう言って、子どもに微笑みかけたときだった。
 子どもの手首に結ばれていた風船の紐がするりとほどけ、風船はヘリウムの浮力でそのままショッピングモールの天井へ向かってふわふわと浮きあがっていく。

 それがスイッチになってしまった。

「うわあああぁぁぁぁぁん!」

 子どもは声をあげて泣き出した。周りの人々もこちらに注目している。

「あちゃあ、風船が飛んで行ってしまいました……プロデューサー、余りは……」

 俺は首を横に振る。風船は全て使い切り、あとは予備の紐くらいしか残っていない。

「うーん、残念でしたね……よしよし、元気出してくださーい」

「ああああぁぁぁぁん、うわあああああああ!」

 茜は困り顔でなんとか子どもをあやそうとするが、子どもは泣きやまなかった。その場から動いてくれそうもなく、俺と茜が困っていたときだった。

「どうかしましたか?」

 近づいてきたのはイベントを終えた裕子だった。



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