【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」
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36: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/07(日) 01:14:45.25 ID:LHxNoXTK0
 その日以降、メンバーばらばらに数回のダンスレッスンと、合間を縫ってのボイストレーニングを経て、春菜、裕美、ほたるがバックダンサーを務めるイベントの本番の日が訪れた。

 現場は中規模程度のライブステージ。エンタメ系の大規模展示会の中のイベントステージという位置づけだ。

 特に出番があるわけではないが、ステージを見学させておくために、茜と比奈も現場に呼んでいる。

「それでは、行ってきますね!」

 ステージ裏、衣装に着替えた春菜が、舞台袖の隅にいる俺たちに笑いかける。
 比奈が軽く手を振り返し、茜はがんばってください、と本人なりに抑えた声でエールを送っていた。

 今日はユニットとしての活動ではなく、仕切りもメインのアイドルのプロデューサーだ。
 春菜たちもほかのバックダンサーとともに行動している。

「笑顔、笑顔……だいじょうぶ」

 裕美が胸に手を当ててつぶやいている。緊張しているのかもしれない。

 ほたるも不安そうな顔をしている。
 ダンスは丁寧すぎるくらいに練習していたので心配ないとは思うのだが。

「舞台裏……初めて入ったっス。こういう風になってるんスね……」

 比奈はあたりを眺める。

「裏から見ると、表とは全然違うんですね! こう、木! っていうんでしょうか!」

 茜がセットの裏側を見て言った。

 確かに、舞台裏には独特の雰囲気がある。表側の華やかな雰囲気とは違い、装飾されていない側の無骨な木材、鉄筋と、機材のケーブル、照明。客席やステージ上とは対称的な静けさ。音はステージのセットに遮られ、こちらと向こうが別世界であることを無意識にも実感する。

 そして、伝わってくるスタッフたちの緊張感。ここは、舞台という異空間を支える、あらゆる専門家たちの戦場だ。

「……よく見ておくっス」比奈が真剣な顔になっていた。「きっと、貴重な機会っス」

「おいおい、そのうち出る側だぞ」

「そうっスけど……いまのこの新鮮な気持ちはきっと今だけっス」

 比奈はそう言って、薄く笑った。――ぞくりとさせられる。

「確かに、比奈さんのいう通り……なんだかすごいですね」

 茜も、なにかに憑かれたようにステージのほうを見ていた。

「みなさん、今日はおねがいしまーす!」

 高い声がひびいて、俺たちはそちらを注目た。
 うさぎの耳をつけたアイドルが、バックダンサーたちに頭を下げて挨拶をしている。よろしくおねがいします、とバックダンサーたちの挨拶が返った。




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