【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」
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20: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/01(月) 23:03:38.26 ID:z+wGLY660
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「お、終わった、っス……入稿、完了……!」
時刻は午前九時五十分。
そう言って比奈はそのままパソコンのそばの床に倒れ込んだ。
「本当に、助かったっス……」
比奈はそう言うが、すでに目が半分寝ている。
最初にあったときよりもくまはさらに濃くなり、顔色も悪い。
「と、とりあえず……寝るっス……助っ人さんも……こんなところでよかった……ら……休ん……」
そこまで言って限界に達したのだろう、比奈は目を閉じて、寝息を立てはじめた。
俺はソファーのうえに畳まれていたタオルケットをとって比奈にかけてやる。
「初対面の男がいるってのに、呑気なもんだよな……」
俺は無防備な比奈の寝顔を一瞥すると、ジャケットと荷物を取って立ち上がる。
まさか徹夜になるとは思わなかったが、これでスカウト失敗ということでいいだろう。
玄関まで来て、扉をみてはっとした。この家の鍵がどこにあるのか判らない。
女の一人暮らしの部屋で、家主が熟睡しているなか、鍵をあけたまま出ていくのも気が咎める。
俺はしばらく迷って、比奈が目覚めてから出ていくことにして、部屋の中へと戻った。
会社にはコアタイムの出社が間に合わないことを連絡する。
「ふぁ……ぁ……」
口から欠伸が漏れた。限界のようだ。俺は比奈から離れたあたりで横になり、そのまますぐに眠りに落ちた。
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「日野茜っ! ただいまもどりましたぁっ!」
脳に刺さるようなでかい声が耳に入って、俺は夢も見ないほどの深い眠りから強制的に引き上げられた。
「ん……」
体を起こす。まだ睡眠が足りない。
床で寝ていたせいか、身体のあちこちが少し痛む気がした。
「マンガはどうでしたか! まにあいましたか!?」
制服姿の茜が部屋に立っていた。
学校が終わってそのままここに来たのだろう。
外はまだ明るい。ということは、夕方前くらいの時間だろうか。
「う〜ん……なんスか……?」
荒木比奈のうめく声が聞こえた。眠たげに目をこすりながら、比奈は体を起こす。
「ああ、茜ちゃん……なんとか間に合ったっス。お二人のおかげっスよ」
「よかったです!」
茜に言われて、比奈は穏やかに微笑む。
髪も顔もぼろぼろだが、さきほどまでの緊迫した雰囲気ではない。これが素の彼女なのだろう。
「えーっと、時間は……ああ、集中するために携帯の電源落としてたんでした……」
比奈はデスクの上の携帯電話を操作する。
「ん〜、三時半すか。さすがにまだ寝足りないすね、二徹になるとは思わなかったっス……っと、メール来てたっすね……」
比奈は携帯電話の画面を見つめて、それから首をかしげる。
「『ごめん、派遣するはずだった助っ人の二人、用事が出来て来れなくなった』……えーと……」比奈は俺と茜を一度ずつ観る。「ってことは、お二人は、どちらさんっスかね?」
まだ目が覚めきっていないのだろう、呑気な比奈の疑問に、俺は苦笑いを返し、茜はそもそもなにが起こっているのかよくわかっていない様子だった。
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