430:名無しNIPPER[sage]
2017/09/26(火) 21:41:44.74 ID:Nkr8DRMT0
「離せ!離せよ!お前らも何考えてんだよ!」
「いいのよ。優しい人」
必死に満と仲村の拘束を振り解こうともがく真司に、典子は儚げに微笑みかけ、
自分の死が夫と目の前にいるその仲間達に遺恨を残さないようにする為、残された
時間の許す限り、一つでも多くの言葉を重ねた。
「私は英行さんが何をしているのか理解できないけど」
「英行さんがこうすると言うことは、きっとそれは大切なこと」
「貴方達を守る為に、英行さんが私達を捧げるというのならそれは本望」
「だから、あなた達はあなた達のまま強く生き抜いて....」
「ああっ...あああああああああああああああ!!!」
ミラーワールドの止まっていた時が一気に動き出す。
限界時間をとうに過ぎていた香川母子の身体が徐々に粒子と化していく。
「英行さん...だい、すき...」
「典子...裕太...。また、また明日に...」
「ええ。また、明日。会いましょう...」
真司は狂乱状態に陥りながら、ただ目の前で何の罪もない母子が消滅する様を
見殺しにすることだけしか出来なかった。
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