425:名無しNIPPER[sage]
2017/09/26(火) 21:39:03.22 ID:Nkr8DRMT0
『東條君。私の背中を君に預けます』
『だから、君の命を私に預けて欲しい』
脳裏に浮かんだ東條の命懸けの挺身が、香川の家族に対する深い愛情を
上回った。たとえこの戦いの果てに、何一つ得るものが無かったとしても、
戦いの中で失われた犠牲を無かった事には出来ない。
自分の背中には、既にその命を背負うと決めた仲間がいる。
荒唐無稽な自分の理想と行動に殉じ、命を落とした仲間がいる。
自分を信じて、過去を乗り越えようと懸命に足掻く仲間がいる。
彼等の死を、偽りにすることはできない。出来る訳がない。
この選択は間違っている。家族を犠牲にする英雄は英雄ではない。
英雄以前に、人として大切な何かが破綻している化け物と同類だ。
それでも、香川英行は自分の意志を変えない。
仲間を見捨て、愛する家族と共に、全てを投げ出し逃げる。
悪魔が保障した安寧という選択肢に、今すぐにでも逃げ込みたいという
人として大切な何かを守るという当然の選択肢を切り捨てる。
英雄は切り捨てる一に、自らの人としての幸せをあてがった。
「ただ、私には覚悟が...覚悟が足りなかった」
「失う覚悟が、大切な何かを失っても尚戦い続ける覚悟が足りなかった」
妻よ、息子よ。これが英雄たらんとした愚かな男の末路だ。
狂人と罵るがいい。悪魔と憎むがいい。
お前達の死を無駄にはしない。
それでも、私は、私は誓う。
最後まで掲げた自分の信念は絶対に曲げない。
多くを救う為に一つを犠牲にする勇気を実現する為に私はお前達の
かけがえのない命を犠牲にし、英雄となり神崎士郎を討つ。
お前達の命は確かに、私にとってかけがえのない尊いものだ。
だが....だが....それでも、私は....
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