426:名無しNIPPER[sage]
2017/09/26(火) 21:39:32.86 ID:Nkr8DRMT0
「誰かを守る英雄が、一人だけじゃいけないって誰が決めたんですか?」
「先生は犠牲になっちゃいけない人なんだ。だから僕は先生を守る」
「やりましょう。先生。あと一息です」
死んでしまった仲間がいる。
自分を信じて、命を賭けて共に戦ってくれる仲間がいる。
そう、誰よりも守らなければならない自分の命を香川英行という一人の
狂人の狂言を、理念を丸ごと信じて戦ってくれているのだ。
ここで家族を取ってしまえば、香川英行は英雄ではなくなってしまう。
しかし、家族を見捨てても香川英行は英雄ではなくなるのだ。
死ぬ覚悟はとうに出来ていた。
あの浅倉威との戦いで命を落とすことになったとしても、罪無き人々を
脅かすあの凶悪殺人犯と差し違えるだけの覚悟は持っていたはずだった。
しかし、あの時に死んだのは自分ではなかった。
自分の掲げた英雄の覚悟というエゴの犠牲になったのは東條だった。
そして今、再び香川英行は『英雄』という都合のいいエゴで自分を
信じて付き従う仲間達の命を犠牲にしようとしている。
彼等が自分に掛けてくれた言葉と、尊ばれなければならない勇気を。
そんな彼等に自分が掛けてくれた言葉と、掲げた信念を,,,
それは許されない冒涜だ。
引き返す訳にはいかない。偽りにする事なんて出来ない。
多くを救う為に一つを犠牲にする勇気。
それは英雄になる為の条件ではなく、英雄という妄執に囚われた哀れな
道化にピッタリの呪いではないのかと香川は自虐した。
「必ずだ...必ず...私は....」
満と父親の別離とは比較にならないほどの、無残で残酷な悲壮なまでの
覚悟を決めた香川は、最後の決断を下した。
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