418:名無しNIPPER[sage]
2017/09/26(火) 21:34:02.04 ID:Nkr8DRMT0
「たとえ、この並行世界にいる神崎君を倒しても意味は全くない」
「我々の最後は有り得た筈の一つの世界の結末。そういう事ですか」
「並行世界ではなく、単一世界の話であればまだ救いはあったものの...」
憤懣やるかたない表情で近くにあった壁を香川が殴った。
当然だ。
『多くを救う為に一つを犠牲にする勇気』を掲げて英雄たらんとし、この
ライダーバトルを終結させる為に奔走し続けた男にとって、優衣の口から
飛び出た残酷な真実は耐えきれない程の屈辱でしかなかった。
東條が死んだ。自分に協力してくれた六人の疑似ライダーが落命した。
そして今、残った仲間達の命が危険に晒されようとしている。
しかし、今の香川には自分が掲げたエゴを貫き通すだけの強固なまでの
傲慢ともとれる強烈な自負心が消え去ってしまっていた。
自らが掲げた理念は全て無駄だったということを悟ってしまったからだ。
東條の死は無駄死で、疑似ライダーは浅倉への復讐を果たせないまま
神崎士郎に反目し続けた自分のとばっちりを食って全員が焼き殺された。
(なにが、多くを救う為に一つを犠牲にする勇気だ...)
(なにが英雄なんだ...!!)
結局自分は、自分の口から出た自分でさえ理解できていない一見、高邁に
見える体の良い詭弁で、自分のエゴを満たす為だけに何も知らない無知な、
出会う筈のなかった人々の未来と運命を狂わせた最悪の道化でしかなかった。
いつ神崎が自分の家族を人質にとってくるのか分からないんだぞ?
いつまで悠長にしているんだ、香川英行?
「くっ...そぉ....」
己を口先だけの役立たずと卑下した香川は、人目をはばかる事無く
ボロボロと涙をこぼし、泣き崩れた。
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