410:名無しNIPPER[sage]
2017/09/26(火) 21:26:13.75 ID:Nkr8DRMT0
「はい....」
絞り出すように神崎優衣は香川の問いに返事を返した。
「お兄ちゃんと私は、早くに両親を亡くしました」
「私達の両親は...私に虐待を加え、お兄ちゃんは私を庇ってくれました」
「そして、その虐待のせいで私は小学生の頃、死にかけました」
堤防が決壊したダムのように優衣は怒濤の如く、自らが辿ってきた
半生をこの場にいる四人へと聞かせ続けた。
「お兄ちゃんは、昔から頭が良く、よく未来の事を当て続けました」
「優衣、この日は外に出るな。あそこの交差点で車が事故を起こす」
「優衣。今日は友達の家に泊まれ。父親が職を失いお前に当たり散らす」
「まるで占い師のようにお兄ちゃんは未来に起きる事を予知し続けました」
「まさか....」
優衣の告白に大きく目を開いた真司は、ハッとした表情で優衣を
見つめた。
「うん。真司君が思っているとおりの事が起きたんだ」
「私は昔、真司君と真一君に出会っているの」
「どうして君が...まさか!?」
真司の顔がみるみるうちに青ざめていく。
震える手で真司は龍騎のデッキを慌てて取り出した。
自らが契約しているドラグレッダーのカードを引き抜く。
それはまるで過去に自分が優衣から貰った絵と今、自分が持っている
赤い龍の絵を見比べているようだった。
「さっき、私が何者かを聞いた人がいたよね?」
「私はかつて人間だった存在、今は人間の姿を取った『何か』だよ」
カラカラと音を立て、真司の手から龍騎のデッキが落ちた。
優衣の放った衝撃の一言に、真司もあの冷静な香川でさえ動揺を
隠す事が出来なかった。
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