409:名無しNIPPER[sage]
2017/09/26(火) 21:25:42.72 ID:Nkr8DRMT0
「君と、その城戸さんのお兄さんはどんな関係だったんだい?」
まず最初に口を開いたのは満だった。
「.....」
しかし、優衣は気まずそうに満から視線を逸らし、その質問に回答
することを避けた。
「じゃあ、君は何者なんだ?どうして神崎士郎は君に固執する?」
次に質問した仲村も優衣は冷たく黙殺した。
「優衣ちゃん!答えてくれないと話が前に進まないよ!」
苛立った真司が優衣に二人の質問への返答を促すが、当の優衣は
ただひたすらに沈黙を守り続けるだけだった。
「....」
埒があかない。このまま神崎優衣が口を割らないままだったら、恐らく
そう遠くないうちに、神崎士郎は情報の漏洩を防ぐ為、どのような手を
使ったとしても、必ず自分の妹を攫い、自分の傍に置くだろう。
そうなってしまえば、もうおしまいだ。
だが、香川英行は周到な下準備を怠っていなかった。
「神崎さん。私には息子がいるんですよ」
「これを、見て頂けますか?」
香川は自分のビジネスバッグの中から、細長い筒の中に丸められた
一枚の画用紙を取り出し、それを広げて優衣の視界に入るように広げた。
「それは、香川さんの絵ですか?」
「はい。息子が保育園のお絵かきの時間で書いてくれた私の絵です」
香川の息子が書いたというその絵は、いかにも子供らしい絵であり、
香川の顔の原形すら捉えていない丸と四角の配置だった。
「下手でしょう?でも、私は一目見てこれは私だと理解できたんです」
「何故ですか?」
「この絵には私に対する息子の想いがこもっているから、ですよ」
そう言うと、香川は画用紙をひっくり返し、自分の息子が何を考えて
この絵を描いたのかが説明されている題名を読み上げた。
香川の息子が描いた絵の題名は『パパは家族の味方』という題だった。
「たとえその真意がどれだけかけ離れていようと、本質は変わりません」
「息子にとって私は、家族を守り、守らなければならない英雄であり」
「神崎君にとって君は、愛おしみ守り通さなければならない家族なのです」
「裏を返せば、それだけ神崎君は君の愛に飢えていると思われます」
「だから、神崎君と君は互いを守る為に鏡の世界の力を借りた」
「それが、ミラーモンスターの正体なのでしょう?」
まるで自分と士郎の全てを見透かすような香川の言葉に、優衣は
己の身体の震えを止める事が出来なかった。
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