354:名無しNIPPER
2017/05/23(火) 12:22:42.73 ID:JcVHvI7Q0
「あの時、私は東條君に命を救われました」
「おそらく私一人では浅倉威に返り討ちに会った筈です」
「悔やんでも、悔やみきれません」
「...ッ!私は...私の言葉が、東條君を...死に追いやったと思うと...」
本当なら、もっと教えたかった事が沢山あった。
不器用で人付き合いと嘘をつくのが下手な東條が自分の足で立って
歩けるようになるまで、その成長を見続けていたかった。
命を賭けたライダーバトルに東條を巻き込んだのも、最後まで困難に
負ける事なく立ち上がって、勝利を掴むことの重要さを教えて、彼の
今後の人生を輝かしいものにしてやりたかったという気持ちからだった。
怜悧で理知的な香川が流す涙に満は何も言えなかった。
ただ、自分が加わった最初の頃に香川が言っていた神崎優衣の抹殺で
全てが終わると言っていた頃にはもう戻る事は出来ないし、仮に優衣を
抹[ピーーー]るよりも、ライダーバトルの決着の方が早く着くのではないかと
いう懸念と危惧を抱いていた。
「先生は東條を救えなかった事を無念に思っているかも知れないけど」
「それは違うと思います」
「東條は先生と肩を並べて戦って最後まで先生を守り抜いた」
「先生。俺、東條の事は嫌いでした。でも...今はただ...」
「アイツが...英雄になれた事が、凄く尊いことのように感じます」
「あああ...。私はッ!私はぁ...うううううう......!!!」
自分よりも東條と深く関わっていた仲村の言葉に香川はただただ
涙を流し続ける事しか出来なかった。
「東條は先生の掲げた覚悟を自らの命で実現したんです」
「先生は間違っていない。だから先生は最後まで戦わなければいけない」
「香川先生。やりましょう。ライダーバトルを終わらせましょう」
「英雄の覚悟を持った一人の人間として、ミラーワールドを閉じるんです」
あえて当初の目的だった神崎優衣の抹殺を言葉にしなかっただけ、
仲村にも優衣を[ピーーー]事にある程度の抵抗があったのかもしれない。
ともあれ、自分に掛けられたその言葉に奮起した香川は涙を拭い、
溢れそうになったその感情に蓋をして、二人に向き直る。
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