353:名無しNIPPER
2017/05/23(火) 12:22:05.12 ID:JcVHvI7Q0
(そっかぁ...東條さん死んじまったんだな)
心の中でキチガイ一歩手前とか何考えているのか分からない奴と酷評し、
ウマが合わなかった相手ではあったものの、その最後は英雄の覚悟を説く
男の後を追うものに相応しい終わりだった。
英雄と共に巨悪を討ち取り、英雄に成り上がった瞬間に命を落とす。
初めて出会った時の東條の瞳は、何も定まっていない生ける屍と同じ
虚無を宿していたが、戦いを経るごとに、言葉を交していく内に徐々に
人らしさを取り戻し、溌剌としたものへと変わっていった。
その死に方はありきたりな悲劇だが、その時の東條の心の中には、
きっと後悔はなかったのだと満は想いを馳せた。
「報告は以上です」
「はい。分かりました」
会議は滞りなく淡々と進んでいく。ライダー同士による今回の戦闘の
大まかな俯瞰を掴んだ香川は、自分のポケットからタイガのデッキと
烈火のサバイブのカードを取り出した。
「それは...」
「ええ。東條君から託された...彼の唯一の形見です」
ここで香川は初めて堪えきれずにその表情を苦悶に歪めた。
英雄になる覚悟を常に説いていた自分に心酔していた危うい所がある
教え子が自分の理想に殉じて命を落とした事に香川は耐えられなかった。
香川の当初の予定では、多数を生かすための少数の犠牲に東條や仲村は
入っていないはずだった。浅倉がサバイブで強化変身した時でさえ
香川英行は仲間の安全を慮っていた。
しかし東條は自分の命を香川に全て賭ける事に悔いはないという信頼と
信念の元に散っていった。そして東條が死を覚悟して浅倉と戦う自分の
元に駆けつけてきてくれなかったらあの戦いに勝利できなかったのも
事実だった。
問題は、その現実に香川自身が向き合えていない事だった。
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