223:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/28(金) 22:40:28.21 ID:xchiMuX50
「そうかぁ...あの性根の腐った満が、ここまで変わるとはなぁ...」
しみじみと呟いた父の顔から険しさが取れ、代わりに柔和な微笑みが
浮かび上がりはじめて来た。
「満...俺は、ダメな父親だった」
「母ちゃんが死んで、その辛さを忘れるために仕事に逃げちまった」
「本当はお前のことを...一番に見てやらなきゃならなかった...」
「でも、どうしても...どうしても...素直になれなかった...」
「母さん、優しかったよね。母さんとまだ、別れたくなかったんだよね」
「親父、分かってたよ...」
「あぁあぁあああ...そうだった。俺は、母ちゃんを愛してた」
「お前が生まれて三年後に、白血病で死んじまったんだ...」
「俺は何も出来なかった...俺と結婚したばっかりに...アイツは...」
「違うよ、親父。それは違う」
「アンタが母さんを愛していたように、きっと母さんもアンタを愛してた」
「だって、俺の記憶の中の母さんはずっと俺とアンタに笑いかけていた」
「そうじゃなかったら、きっと母さんは笑ってくれなかったと思う」
家族三人で過ごした記憶は数えるほどしかなかったけれども、それでも
父がいて、母がいて、そしてその二人の真ん中に自分がいた。
今は追憶の中ででしか、その薄れ行く思い出の名残を探せないけど。
愛は確かに『心』の中に確かに残っていた。
それだけで充分だった。それだけでもう、充分だった。
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