221:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/28(金) 22:39:17.02 ID:xchiMuX50
「親父、アンタに怒られてさ、家を出て社会を見てきたよ」
「って言っても...まぁ、俺の出来る事なんてたかが知れててさ...」
「小中高でやってきたことの繰り返ししながら、毎日バイトしてた」
「何遍も怒鳴られて、叩かれて、家に帰ったら誰もいなくて...」
「そんな毎日をずーっと、家出てから二年間過ごしてきたよ」
満の言葉に、微かに反応するかのように握られた左手が動き出す。
ピクピクと動いた左腕に少し驚いた満が顔を枕の方向に向けると...
「おぉ....満、か」
目を覚ました父親が自分を焦点の定まらない瞳で見据えていた。
「起きたんだね。親父」
「もう、先が長くないんだって?」
「ぁぁ...末期の癌らしくてなぁ...全身がもうおだぶつだ...」
力なく微笑んだ父の顔にたまらないやるせなさを覚えた満は、今すぐ
逃げ出したくなる自分の心を懸命に押さえつけた。
コイツさえ父親じゃなければ...
あれだけ憎んで恨んだ相手が、今ではその憎らしささえ思い出せない程、
衰弱している。それが無性に悲しかった。
485Res/614.50 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20