219:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/28(金) 22:38:16.53 ID:xchiMuX50
「ああ...くそ...なんで、なんでこうなるんだよ...」
「俺は、俺はッ...幸せになりたかっただけなのに...」
親子三人で漫然と、毎日を楽しく過ごしたかった。
それだけでよかった。それだけが満の望んだ幸せだった。
今となっては、その夢が叶う事はもう二度と無くなってしまった...
「...佐藤さん、親父はまだ意識があるんですか?」
「はい。ですが、最近意識の混濁が見られるようになって...」
「まだ、俺の事覚えていますかね...親父」
「ええ」
「そうですか...」
体を震わせた佐藤は、それを最後に何も語る事なく口を閉ざしてしまった
そんな佐藤を一瞥した満は、遂に父の病室のドアに手をかけた。
「厳しいだけで父親らしいことしてくれなかった親父だけど」
「それでも、俺にとってはたった一人の肉親なんです」
「佐藤さん」
「今まで、親父の事を支えてくれて本当にありがとうございました」
自分に言い聞かせるようにして、満は後ろを振り返る事なく扉を開き、
父が眠る病室の中へと入っていった。
背後から聞こえるすすり泣きが号泣に変わる前に、扉が閉ざされた。
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