147:名無しNIPPER[sage saga]
2017/04/25(火) 11:02:21.73 ID:L6BVEgLS0
「ですが、家内や息子はどうにも辛いのが苦手らしく...」
「私は家で常に一人だけレトルトパウチのカレーなんですよ...」
「え?先生奥さんとお子さんがいるんですか?」
「ええ。ほら、この写真の小さい子が私の息子なんですよ」
「裕太っていう名前なんですけどね。まだ小学生なんですよ」
「うわ〜。可愛いな〜。裕太君が羨ましいっすよ」
「俺の父親なんか...父親...なんか...」
携帯電話の待ち受け画面には幸せそうな笑顔を浮かべている香川と
その家族の写真が写っていた。
「どうかしましたか?佐野君」
「あ、いえ...俺の親父はなんていうか嫌な奴だったんで」
「こんな感じに家族で写真なんか撮った事ないんですよ」
思い出したくない思い出に蓋をした満は、心配そうに自分を見つめる
香川に無理矢理笑いかけて、席を立とうとした。
「香川先生。なにからなにまでありがとうございました」
「お礼はいつか必ずさせて頂きますので、これで失礼させて頂きます」
話の合う相手との話を切り上げる事に残念そうな表情を浮かべながらも、
香川は深く満を引き留めようとしなかった。
丁度昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴ったのを口実に、満は
香川に深々と頭を下げて、大学の食堂を後にしようとした。
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