98: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/05/06(土) 04:35:21.06 ID:u3lwuGH40
あの日から、司令官と青葉の間に少し変化が起きました。
それは青葉が一方的にそうし始めたのですが。
彼が仕事を終えた後は、必ず__さん、彼の下の名を呼ぶようになった事。
「__さん、今日もお仕事終わりましたねぇ。
「そうだね、『青葉』。食堂にでも行こうか。」
仕事以外では青葉も本名で呼ぶように言ったのですが…彼の方は、今も呼んではくれないままです。
仕方ないとは思いつつも…やっぱり、ちょっと寂しいかな。
あの日あれだけの事をしでかしたのに、彼は怒りもしませんでした。
しばらく呆然としていて、でもすぐにあの微笑に戻って。逆に青葉の頭を撫でて、慰められた始末で。
「今はそんな気は起こさないから、心配しないでいい」なんて、よく言いますよ。
だから青葉は決めました。少しでも壊れたものを取り戻してみせるって。
その為にこそ、もっと彼を深く知って、色んなものに触れないといけない。
全てを知る事が出来たなら、きっと壊れた所も治せるでしょうから。
…あなたは生きてるんだって、絶対分からせてやるんだ。
それで部屋に戻ってやる事と言えば、ちょっとした泊まりの準備でした。
明日から演習の関係で、3日程ここを離れます。
日程自体は2泊3日なのですが、でも演習は1日だけ。その中日はオフになっています。
オフ日は演習先での観光が義務付けられていて、それは上からの命令です。
要は慣れない街の日常に触れて、普段自分達が何を守っているのか感じろと言うお達しでして。
まぁ、たまにこういう事があるのですが…今回は観光じゃなく、取材と行かせてもらいます。
何と言っても、行先はあの街の鎮守府なんですから。
今回の引率は、司令官じゃなくて少尉さん。
彼の不在と言う環境で、あの街です。調べるにはまさにうってつけ。
愛用の一眼は置いていって、機動性重視の薄型で行きます。それでスマホはレコーダー代わりにして。
『あの人』を捕まえられたら、一番早いんだけどなぁ。
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