97: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/05/06(土) 04:32:11.47 ID:u3lwuGH40
「うおおおおおおお!!!!」
叫び声と共に、男の持つ機関銃の音が鳴り響く。
それは海面に浮く死体を貫き、それを見つめる異形達の肌を掠めた。
だがその者達にとって、それは何ら意味を持たない。
異形達は、ただ呆然とその男を見つめるばかりだった。
「…ホットコウカ、今回ハコレデ終ワリ。」
「良イイノデスカ?殺サナクテ。」
「ハァ…ワカッテナイナァ…イイ?アタシ達ハ『人間』ト戦争シニ来タンダ。アレハモウ、殺ス意味モナイヨ。
ソウダネ……デモ、代ワリニヨク見テオクトイイ。」
「アレヲデスカ?」
「…アタシ達モ所詮『心』ト『命』、両方ガ無イト生キテルトハ言エナイ。ドッチカガ死ネバ終ワリサ。
ダカラ、ヨク覚エテオクンダ。アタシ達モコノ先、アアナルカモシレナイッテ事。
殺サナイ事ガ、アアナッタ奴ニハ一番ノ攻撃ナノサ。」
“人間ハ手強イ…コノ先コソ、コッチモタクサン死ヌンダロウナ。
タダ、願ウナラ……。”
「…仲間タチニハ、アアハナッテ欲シクナイネ。」
異形の一人が振り返った先には、沈み行く船首と、波に飲まれる男がいた。
敵も去り、独り漂う男は目を開けたまま、何処かをじっと見つめている。
彼の瞳は開いているが、意識は既に途切れていた。
その瞳孔には。
透き通る青空だけが、虚しく反射していた。
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