481: ◆FlW2v5zETA[saga]
2018/06/02(土) 06:43:10.35 ID:n943p0E7O
「ここは…あの岩か?」
「……うん。そうだよ。」
「登らなくて良い…無理、するな…。
少し……膝、貸してくれ…。」
膝に乗る頭は、力無さ故に重くて。
浅く動く胸は、この人の死が近付いている事を教えていました。
私は出来るだけ優しく、血まみれの手で頬を撫でて。
「良い空と…風だ……。」
「そうだね…ここの風は、本当に気持ちいいよ。」
「俺達…の…始まりの場所…だったよな……。」
「うん…ここからだった。」
笑わなくちゃ。
最期まで、笑わなくちゃ。
でも何ででしょう、そう必死にいつものように笑おうとしても…この人の頬に、ポタポタとこぼれる水滴だけが増えて行く。
最期なのに。
最期だから、上手く話せない。上手く笑えない。
そんな私の目元に優しく触れたのは…同じく血まみれになった、彼の指でした。
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