34: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/04/16(日) 07:32:51.97 ID:ioLvyS6FO
『prrrrr....』
「はい、もしもし。」
深夜、あるベッドルームに電話が鳴り響いた。
それを受けたのは、貼り付けたような笑みを携えたとある男だ。
その電話の向こうからは、老人の声が響いていた。
『私だ。すまないな、連絡が遅れてしまって。』
「これはこれは、元帥殿。あの件でしょうか?」
『ああ。死体の始末だが、そちらも上手く行ったようだ。これであの件は、粗方ケリが着いたはずだ。』
「そうですか。後任は決まりそうですか?」
『××鎮守府の大尉が少佐と司令官に繰り上がる。それで補填だ。
彼は何も知らないし、代理時の作戦で戦果を挙げたからね。周囲からすれば、抜擢にしか見えないはずだ。
…すまないな。海軍の為とは言え、よりによって君のような若者にあんな役目を…。』
「いえ、立候補したのは僕ですから。お気になさらず。」
『身内の不始末は、身内でケリを着ける。それを決めたのは私だ。
有事の際は、責任は全て私が取ろう。君に迷惑は掛けない。
…初めて人を殺した感覚は、どうだった?』
「虫を殺すようなものでしたよ。銃を撃つ時、殺虫剤を使う気分でしたね。」
『ふふ…恐ろしい男だよ、君は。君がもう少し老けていたのなら、私のポストを譲っていたのだがな……では、失礼する。良い夜を。』
「はい、おやすみなさい。」
電話を置き、彼はベッドに腰掛けると一丁の銃を取り出した。
残弾数を確認すると、二発だけ弾が減っている。
それを確認するといつもの笑みを浮かべたまま、彼はこう呟いた。
「あーあ……期待外れだったなぁ…。」
そう落胆の言葉を吐きながらも、男は尚も笑みを崩さずにいた。
ようやくその笑みが消えたのは、彼が眠りに就いた時の事だった。
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