260: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/11/27(月) 06:31:51.72 ID:3Y4cAnbMO
『prrrrr……』
とある民宿の一室に、着信音が響く。
浴衣姿の男が電話を持つと、画面には職場からの通知が出ていた。
「もしもし。少尉、何かあったか?」
『先輩、バラバラ殺人のニュース見ましたか?』
「見たも何も、今僕のいる県だよ。検問に引っかかって、警棒の説明に手間取ったんだ。」
『さっき警察から、総務経由でその件で電話があったんですよ。
何でも被害者、青葉の元カレらしくて…刑事さんと電話した後顔色が悪かったんで、部屋に帰らせました。』
「そうか、報告ありがとう。捜査協力の話は総務でついてるのか?」
『ええ、概要がまとまり次第、先輩の方にも総務からメールが来る手筈になってます。
でもキツいっすね…こういうケース自体初めてですけど、青葉の精神衛生に悪いですよ。』
「ケアなら任せてくれ。後であの子に連絡するよ。」
『お願いします。』
電話を切ると、彼はタバコに火を灯す。
久しいメンソールの香りは、秋の夜も手伝ってか妙に彼の胸に冷たいものをもたらしていた。
「ふー…………ふふ、はははは……。」
煙を吐き出す吐息は、次第に笑い声へと変わる。
彼もまた、ヒトなのだ。善意もあれば、その逆もまた然り。
この時彼の胸に去来していたのは、明確かつ真っ黒な感情だった。
「…因果応報だ。」
顔も名も知らぬ者ではあるが、彼にとっては、過去に大切な者を傷付けた事実は変わらない。
彼は『感情』を失っていたのだ。その中には悪意や憎悪の類も含まれていた。
取り戻したそれは時折、彼自身の過去にも牙を剥く。
表には決して出さないが、作戦中、中破や大破をした者が出ると、強烈な憎悪が敵に向く瞬間も増えた。
いつかの光景が、その度に彼の中でフラッシュバックするのだ。
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