201: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/09/27(水) 08:29:51.68 ID:NsTJuwti0
「…まあ、こんな流れです。まだここまでしか書けてないんですけどね。」
「…………ふふ、売れないわね、その小説…。
だってその女の子、あまりにもバカで…惨めで……誰も共感なんて出来ないわ…。」
最後まで話し終えて、隣から聞こえてきたのは涙声でした。
それは私にとっても、意外な結末。
当初はビンタの一発ぐらいは覚悟してましたし…裏を返せばそれだけ悪い面も抉って、傷付けるつもりで、彼女の背景をひたすら想像して作ったお話でしたから。
……これだけ悪意を持って接したのに、何で怒らないんだろう。
そう思った瞬間、ずきりと胸が痛んだのです。
「……ねぇ、その後の展開予想しても良いかしら?」
「…どんな話でしょうか?」
「……彼はその後何年かして、主人公と同い年の女の子と結ばれる。
その子と出会った事で、彼は再生への道を踏み出して。
主人公は最初その子の事も気に食わなくて、険悪になるの。
でもその子も少し嫉妬深い所もあって…辛い事があった彼を守る為にこそ、心を鬼にして主人公にひどい事を言う……なーんて、安っぽいかしら?」
またずきりと胸が痛んだのは、その時の事でした。
反撃を食らったからとか、そんなのじゃなくて…ただ、上手く説明出来ない痛みで…そんな私を知ってか知らずか、山城さんは言葉を続けます。
「……でも、そのひどい言葉のお陰で、主人公は自分の小ささに気付くの。
うん、まぁそれだけなんだけど……使えないかしら?これ。」
「あ……え、ええ!参考にさせていただきます!ありがとうございます!」
「ふふ…あ、そろそろ集合ね。もう行かなくちゃ。」
そうして彼女が立ち上がった時、ようやく俯いていた顔が見えました。
「……青葉ちゃん、ありがとう。またね!」
夕暮れに照らされたその泣き笑いは、あまりにもきれいで、可愛くて…写真に収めたかったぐらいで。
それは私にとっては、ビンタなんか目じゃないぐらい痛くて。
必死に笑顔を作って手を振る事しか、私には出来ませんでした。
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