199: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/09/27(水) 08:25:47.63 ID:NsTJuwti0
ちょうど平日の、あの公園が人も疎らになる時間。
お姉ちゃんがトイレに行ってる僅かな隙に、隠していたナイフで手首を切ったようだ。
それは却って憂鬱になるぐらいの、あの日と同じ快晴の事。
入院期間は、決して長くはなかった。
だけど彼がこの家の敷居をまたぐ事は、二度と無かった。
お姉ちゃんが彼と別れたのは、彼が再び退院した日から1週間後のこと。
彼はと言えば、その後職務復帰の許可が下りると同時に、異動の辞令も下ったのだと言う。
それは、軍なりの気遣いだったのかもしれない。
だけど別れを告げる事も出来ないまま、彼はこの街から消えてしまったのだ。
あの怪物と戦う為のある兵器の存在が公になったのは、それから暫く後の事。
それは人間、それも適合する女の子しか強化出来ない存在だった。
実感も持てないまま、毎日絶望的と報道されていた世界情勢は、そこから徐々にポジティブなものに変わって行った。
お姉ちゃんは変わらず軍の事務として働いていて、でもその間、やっぱり元気が無かった。
いえ……元気が無いと言うより、何かをずっと思い詰めていると言った方が正確だったかしら。
一緒にTVを観ていて戦争の話が出ると、時折あの優しいお姉ちゃんとは思えない目をする事が続いて……。
しばらく離れて暮らす事になると告げられたのは、それから半年後の事だった。
適合試験を受け、その兵器への適正が出たからと。
そしてお姉ちゃんは、戦争へ行ってしまった。
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