151: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/06/18(日) 06:53:13.41 ID:E5Fo7Ca+O
“……真っ暗…まだ3時かぁ。”
一度目を覚ましたのは、真夜中の事でした。
上は裸ですけど、寒くない。だって、彼の腕にくるまれているんですから。
ふふ…叶っちゃったんだぁ…。
幸せを噛み締めて、胸元に頬を寄せて。
これは夢じゃないんだって思えました。
静かに眠る彼の顔は穏やかで。でもいつかみたいな、死んだような寝顔じゃない。
それが愛おしくて、嬉しくて。青葉は少しの間、彼の心臓の音に耳をすませていました。
“でもトイレ行きたいなぁ…起こさないように…っと。”
ベッドを出て、そろそろとトイレに向かいました。そこで初めて、ちゃんと家の中を歩いたんです。
最初にトイレと間違えてお風呂場を開けちゃって、目に入ったのは脱衣所。
端の方に透明なビニール袋があって…その中には、血の付いたマットが入っていました。
これ、きっと拳の怪我のだ…手に取ってみると、かなりの血が出ていたのがわかりました。
さっきまでの幸せとは別で、胸がぎゅっとなります。どんな気持ちだったんだろ…。
用を足して寝室に戻ると、多少目が覚めたのでしょう、部屋の様子がさっきよりはっきり見えました。
間接照明にも目が慣れて、どんなレイアウトかよく見える。
棚には沢山のCDが並べられていますが、それ以外は特にめぼしい物もありません。
むしろ無機質さすら感じるぐらい、他に生活感や趣味の要素が見当たらない。
本棚も、殆どは戦術や軍事関係のもの…思い出のアルバムも無いし、何か写真が飾られてる様子も無くて。
PCには外付けHDが繋がれていますが、これも音楽用なのでしょう。
……デジカメや古い携帯の写真とかも、PCに無いのかもなぁ。
CDラックは整頓されていて、ちゃんとアーティスト順に並べられていました。
悪いとは思いましたが…ふと気になって、ある区画を探したんです。
彼が一番好きな曲を作った人達の、あの頭文字を。
“綺麗…。”
何となく手に取ったのは、黒地に綺麗な指輪が印刷されたもので。
しばらくそのジャケットを、ぼーっと見つめていました。
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