青葉「けしの花びら、さえずるひばり。」
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146: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/06/01(木) 05:59:59.33 ID:SzsIr5nJ0

「……彼女は俺を振ったのを後悔していたが、それでもやり直す事は出来ない。
あまりにも、時間が経ち過ぎていたんだ…俺が俺を取り戻し出すには。」

「司令官…やっぱり、感情が欠けてしまっていたんですね。」

「そうだろうね…昔は寂しいや悲しいと言った類も、上手く感じられなくなっていた。
ただあの場所に俺は焦がれていて…その理由さえ、理解出来なかったのにな。

だけどこの頃、少しずつ蘇ってきたんだ…君との交流の中でね。
思う所は沢山あったが、まず彼女とちゃんとケジメを着けなきゃと思った。講習の話は、その時に来たんだ。」

「それで…扶桑さんは何て?」

「……宿にいる時、彼女から連絡があった。それで次の日会いに行ったよ。

彼女もまた、後悔したままだった。
ただ俺とは逆で…やり直せないかって、そう言われた。
だが、今となっては不可能な話だ。
俺はその間、余りに変わりすぎたからね。戻る事は出来ない…その旨は、ちゃんと伝えたよ。」

「…そう、ですか…。」

それを聞いて安心した自分がいて。
ふと我に返って、自己嫌悪を抱きました。

何を安心なんて…だって感情が戻り出したって事は、きっと…。

「……司令官、じゃあ拳の傷は…。」

「…あの件やその後に纏わる気持ちを思い出し始めた、副産物だろうね。
耐え切れなくなって、吐いたり暴れたりしたものさ。
なぁ青葉。俺が見た場所へ行く条件って、分かるか?」

「いえ…。」

「手首を切った時は、気絶しても何も見えなかった…今思えば、簡単な事なんだよ。
あそこは戦場で、死に瀕した者にだけ見える…生と死の、狭間の場所だ。
もしかしたら俺は、そこに自分の心を置いて来たと思い込んでたのかもな。ずっと、俺の中に眠っていたのに。

…まぁ、俺の事はどうでもいい。
今日は無理せず、休ませた方が良いって医務も言ってたよ。ベッドはそのまま使ってくれ。」

そう微笑んで、彼は青葉の髪から手を離しました。
短い間見せた、張り詰めた目なんて無かったかのように。

「司令官は、今夜どうするんですか?」

「俺はリビングで寝るよ。ソファもあるしね。それじゃあ…!?」

「…嫌です。」

背を向けようとする彼の手を、無意識に掴んでいました。
怖くて、寂しくて……それは青葉にとってもでしたが、彼を一人にする事が怖くもあったから。

このまま、遠くに行ってしまわないかって。だったらいっそ…。



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