133: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/05/20(土) 05:05:45.84 ID:MJwCQvXBO
「…ソロモンの狼って、実艦の青葉が呼ばれてたのは知ってますよね?」
「それはそうさ。」
実艦の青葉は、何度大破しても戦線に戻る不死身ぶりからそう呼ばれていました。
その適合者である『私』もまた、狼なのかもしれませんね…意味は大分、違ってしまうけれど。
狼って、愛情深い生き物なんですよ。
裏を返せば、執着の強さとも言えますけど。
こうして腕を絡ませて体を寄せれば、『私』の匂いは否応無しに刻まれるでしょう。
白い制服に、鼻腔に。或いは、記憶の底に。
匂いの記憶って、鮮明なものですから。
胸元に触れた手には、彼の心音が伝わって。
それが早まったのは、今度は気のせいじゃない。
今の心音もそうですし…朝にあの手を見た時、思ったんですよ。
少しずつ、彼に感情が戻って来てるんじゃないかって。
それは嬉しい兆候でしたけど、出張の話を聞いた途端、不安に変わってしまったのです。
だって…もし彼の閉じた感情が、未だにあの人を想っていたとしたら?
感情を取り戻す事で、その想いまで取り戻したとしたら?
それ以上の恐怖なんて、今の『私』にはありませんでしたから。
今は終業後です。
彼も一休みの時で、気を抜くために制服の前は開けられてる…だから、手の中の『これ』を付ける事だって出来る。
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