134: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/05/20(土) 05:07:05.52 ID:MJwCQvXBO
「…何を着けた?」
「それ、あげますよ。青葉のおさがりになっちゃいますけど。」
それはあまり着けてなかった、手持ちのとあるペンダントです。
彼なら似合うと思って、男性向きのチェーンに付け替えたんですよ。
着任した時シャレのつもりで買った、葉をモチーフにしたペンダント。
“『私』と言う『青葉』は、いつでもあなたのそばにいる”って。
“いつでも、あなたを見ています”って。
そんなつもりで持ってきたんです。
「これは……ありがとう。大事にするよ。」
「お守りです。寂しくなったら、いつでもそれで青葉の事を思い出してください。」
「…ああ。」
いつもの微笑でしたが、それでも嬉しそうに見えて。青葉もそれに釣られて笑って。
そんな瞬間は、やっぱりとても幸せで…また深く、彼に抱き着いたのでした。
そんな時でした。
彼の手が、青葉の髪を撫でたのは。
「この前は、言いづらい事を訊いてしまったね…だけど、もし吐き出したくなったら、いつでも言ってくれ。
『俺』でよければ、幾らでも聞くよ。」
じわりとした感覚が、目元に広がりました。
優しい言葉をもらったのもですが…また一つ、心を開いてもらった気がして。
肩に顔を埋めて、それを押し殺していました。
もう、誰にも渡したくないよ…あの人のいる場所になんて、行かせたくない…。
そんな我儘な感情を、押し殺すのに精一杯で。
青葉は、それ以外の事が見えていなかったのでした。
彼の心の奥が、血溜まりの中にある事さえも。
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