123: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/05/15(月) 05:34:33.74 ID:QOyJbMOhO
「…隣、座ってもいいですか?」
「いいよ、おいで。」
しれっと体を寄せて、青葉は隣に座りました。
落ち着くなぁ…こうしてる間は、ゆっくり時間が流れれば良いのに。
寂しげだった波音も、今は優しい音に聞こえて。
世界の変わる瞬間を、じっくりと噛み締めていました。
「〜〜…♪」
「それ、聖なる海とサンシャインですよね。」
「そうだよ、よく知ってるね。」
ふと聴こえた鼻歌に、思わず声をかけて。
蘇るのはさっきの幻と、聞いていた歌の最後。
『潮騒の銃声が夕日に響いて』
そのフレーズと血を吐く彼の影が、脳裏を掠めて。
「…昨日借りて、さっきまで聴いてたんですよ。何ていうか、悲しい歌ですよね。」
「そうだね…確かに悲しい歌だ。」
「……扶桑さんの事、聴いてて思い出したりするんですか?」
「…ああ。別れ話をされた時、こんな海を見ていた。彼女はずっと泣いていたね。」
「そう、ですか…。」
未練は無い。
それはいつか彼が言った事ですが…今思うのは、未練すら上手く感じられないんじゃないかって事で。
もしかしたら、彼も心のどこかに引っかかりがあるのかもしれない。
でも二人が後戻り出来ない事は、どちらの話も聞いていた青葉にはよく理解出来ます。
そう、戻れないんだ…だから青葉が、そばにいてあげなきゃいけない。
青葉で塗りつぶせば、少しでも未来が動くのかな?
扶桑さん…ごめんなさい。
あなたの分も幸せにするって言ったのに、今も青葉は、あなたに嫉妬しています。
だってこんなにも、染め替えてしまいたいのですから。
胸元の広いTシャツに、上着を羽織った彼の姿。
青葉はそこに抱きついて…。
彼の肩に、噛み付いたのでした。
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