124: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/05/15(月) 05:36:32.03 ID:QOyJbMOhO
「__…?」
呼んでくれる本当の名前は、脳に甘く広がって。
口の中の鉄の味は、とても甘美なものに思えて。
残った傷を見れば、ぞくりとしたものが背筋を駆け抜けて行きました。
ああ……これで『私』は、いつでも彼に残ってるんだ。
「__さん、痛みますか?」
「……ああ。」
そっか……ふふ、痛いんだぁ。
込み上げて来るものは、熟れた甘い匂いみたいで。
青葉は抱きついたまま、今度は彼の匂いを楽しんでいました。
だって……痛いって、生きてるって事じゃないですか?
心だって、痛みも喜びもあって…彼はきっと、そこに蓋をしてるだけなんです。
そのまま彼の顔を掴んで、キスをしました。
重ねた唇からは、血の味がした事でしょう。
それが、あなたの命の味なんです。
アナタハイキテマス、アオバガソバニイマスカラ。
拒絶もせず、彼は優しく青葉を受け入れてくれました。
唇を離しても、胸に青葉を甘えさせてくれて…少しだけ、心音が早くなった気がして。
この鼓動は、きっと青葉のせいで。それが堪らなく嬉しくなりました。
それが『私』の、気のせいだとしても。
「なぁ、__。」
「どうしました?」
優しく背中を撫でながら、彼は青葉に声を掛けました。
また本名を呼ばれて、それがもっと嬉しくて…。
「…例えば『僕は人を殺した』って言ったら、君はどうする?」
鉛弾のような冷たさが心臓を駆け抜けたのは、その時の事でした。
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