永琳「あなただれ?」薬売り「ただの……薬売りですよ」
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422:名無しNIPPER[saga]
2017/11/30(木) 01:27:17.08 ID:rqejUdQb0


てゐ「まぁ、そーゆーわけで……お師匠様ですら匙を投げた謎の奇病が、よりにもよって弟子のあたしに罹っちゃってるってわけ」

薬売り「できる事と言えば、精々痛みを和らげる程度……発病そのものまでは防げない?」

てゐ「そーそー。ま、おかげである意味医学に貢献してると言えるけど」

薬売り「被験者として……ですか?」


 確かに、その病は、病と呼ぶにはあまりにも奇怪すぎた。
 数ある奇病の中でも、その症だけは、如何なる病よりも”非現実的”であったのだ。

 こうなれば、妖兎が例の「すれてんがー」に拘る理由が、なんとなく推し量れた気がするな……
 自らの身に罹った「在るのに無い」病。
 これをなんとか完治せんとする糸口を、妖兎は妖兎なりに探していたのだろうて。


薬売り「幻肢痛……なるほど……しかしそれが原因であるならば、こっちとしては、むしろ”好都合”だ」

てゐ「好都合……だと……?」


――――しかしながら、そんな「悲惨」の一言で表せられる病を前に。
 薬売りはむしろ「よい機会」と言わんばかりに、意気揚々と、独自の診断を述べ始めたのであった。


薬売り「幻肢痛とは……元来、失った四肢に起こる物」

薬売り「失った四肢があたかもそこにあるかのように、痛みだけが幻と現れる奇病」

薬売り「しかし、貴方の場合は……それが”全身に蔓延っている"」


 さすがの薬売りとて、空手のままに真理を解く事は叶わぬ。
 しかしそれは、言い換えるならば――――”ほんの一欠片の手掛さえあれば”。
 
 薬売りからすれば、やはりこの状況は「好都合」と言う他になかった。
 【幻肢痛】。その片鱗を見るや否や、薬売りの脳裏の中に、瞬く間に「妖兎の真」を積み重ねる事ができたのだから。



薬売り「四肢は無事。しかし痛みだけが、全身に”幻”となりて現れる……その所以は」


薬売り「おそらく……貴方が失った部位とは……」


 ま、なんと言うか……ようやっと、らしさを取り戻したな。
 と言うかむしろ、そうこなくてはこちらが困ると言う物よ。
 思い起こせば、薬売りとは、たかだか一期一会の縁であったが……
 身共ですら明かせなかったモノノ怪を、見事暴いたあの眼力。
 それがそんじょそこらの兎に敗れたとあったら、身共の沽券にすら係わってくるのだよ。





薬売り「――――【皮】だ」




てゐ「…………」




 返事がなくともその解答は、十分真に触れておると分かった。
 何故なら――――手放したはずの退魔の剣が、より一層震えを増したのだから。




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