永琳「あなただれ?」薬売り「ただの……薬売りですよ」
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412:名無しNIPPER[saga]
2017/11/28(火) 03:05:04.22 ID:ZInpvyTS0


てゐ「なる・ほど……ハナっから、これが目的だったってわけ」

薬売り「滅相もない……兎にまんまと化かされてしまった人間の、最後の悪足掻きですよ」

 ふむ……そうか……あぁ、なるほどのぅ。
 いやにあっさり負けを認めたと思えば、その実はこういう事であったか。
 薬売りが言う「最後の悪足掻き」とは――――すなわち、妖兎が持つ不安の一切を排除する事に合ったのだ。


てゐ「ふん、何とでも言えばいいさ……結局、あんたの目論見通り、”あたしはあんたの前で吐かざるを得なくなった”んだから」


 ただでさえうさんくささ極まる薬売り。
 加えて妖兎は、当初から誰よりも、この薬売りに不振を持っておった。
 一個人の印象もさることながら、この地を守る番人としての嗅覚がそうさせたのだろう。
 よって妖兎が口を閉じる原因が、他でもない自身のせいとあらば――――その他の一切を放棄するしか、術はなかったのだ。


てゐ「じゃああんた、立場的にはただの野次馬って事になっちゃうけど、その辺はおっけーなわけ?」

薬売り「構いませんよ。むしろここまで来たなら、最後まで見届けねば夢見が悪い」

てゐ「なにそれ……ただの好奇心じゃない」

薬売り「そうですね……”貴方と同じ”です」


 退魔の剣を放棄した薬売りが理を知る事は、何ら一切の関係がないただの傍観となる。
 普通なら「見世物ではないぞ」と追い立てたくなる所であるが、しかし妖兎は渋々許可を与えた。
 それは先ほど妖兎が述べた師の受け売り、「確率の観測」とやらに起因する。
 すなわち、二つの可能性の片割れ――――”もしもモノノ怪が自分なら”。


薬売り「言伝があれば……伺いますが」

てゐ「ないわよバカ……”うどんげじゃあるまいし”」


 玉兎と違い、妖兎に後見人は必要なかった。
 後を託すには余りある配下共が、頼まずともどうせ、妖兎の弁を一言一句漏らさず残してくれるのだ。
 よって妖兎が薬売りを残す理由など、どこにもありはしない。

 にも拘らず置いておく、その理由は――――
 ”かつて教わった師の言葉”が脳裏を掠めた。ただのそれだけに過ぎない。
 

てゐ「あんたはただ、見届けるだけでいい……事の一部始終を、その不気味な目つきで」

薬売り「そのように……」


 【――――確率は観測される事で初めて一つに集約される】
 その言葉だけが、薬売りがこの場に御座す事を許したのだ。




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