永琳「あなただれ?」薬売り「ただの……薬売りですよ」
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192:名無しNIPPER[saga]
2017/05/04(木) 20:25:01.77 ID:jSwuJJZ7o


うどんげ「月の都の生活は……うーん、なんつったらいいか……」

うどんげ「説明が難しいわね……あんたら地上人には、絶対想像つかないだろうし」
 
薬売り「平たくで、結構ですよ」


 玉兎は「大雑把」と前置きをした上で、こう言った。

 「――――月の都の生活は、地上の民が浮かべる夢物語とほぼ同等である」。

 ……いや、大雑把すぎないか?
 ならばならば、水を酒に変える実や、雷を落とす杖。
 突風を生む扇子に、振るだけで財宝の溢れる小槌。
 他にも数多あるあの宝具の数々が、月には一挙に集っておるとでも言うのか!


うどんげ「簡単に言うと――――”文明が望む物全てを与えてくれる”。って所かしらね」

薬売り「全てを……?」


 ぐぬぬ、あなどり難し月の都。
 想像を遥かに超えておったわ……それらはまさに魔術と言っても差し支えないであろう。
 言うに事欠いて「文明が全てを与えてくれる」だと……?
 ええい! なんとかこちらから月に向かう方法はないものか!


うどんげ「何でもかんでも文明が全てを肩代わりしてくれる……何もせずとも、栄た文明が勝手に全てを与えてくれる」

うどんげ「だからこそなのよ。だからこそ……」
 

 きぃ〜何と羨ましい!
 ならばならば、毎日毎日昼まで眠り、肉や酒をかっ食らい、夜分遅くまで家に帰らずともよいと申すのか……!
 まこと、気が狂いそうなほどに羨ましき文明じゃ。
 だって、そうであろうに。

 勝手に実るならば農民はいらぬ。
 勝手に届くならば飛脚はいらぬ。
 勝手に残るなら書はいらぬ。
 勝手に唄うなら、琵琶法師はいらぬ……


薬売り「だからこそ……?」


 まさに奉公から解き放たれし享楽の園。
――――しかししかししかぁし! 
 これまた何故なのか。本ッ当に何故なのか。
 それらの享楽を否定した酔狂な者が一人……いや、一羽だけ、月にはおったのだ。


うどんげ「いつしか……人々は自分から動こうとしなくなった」

うどんげ「いつしか誰も……夢を見なくなった」

うどんげ「いつしか、ただ、無限に等しい時を……無駄に消費するだけの存在に、成り下がった」


 この柳幻殃斉。生まれてこの方、ここまで同意できぬ意見に出会った事はない。
 身共とて、あの地獄の修行の日々の最中。
 あの日ほど、修験志して後悔した時はなかったと言うのに……

 しかしそこで終わらぬのが、この柳幻殃斉という男よ。
 それらの修行を耐えきった身共だからこそ、ピーンと来たぞ。
 平民にはわからぬであろうなぁ。
 修験道を骨の髄まで叩き込まれた身共だからこそわかる、一種の悟りじゃ。




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