37: ◆Wv.nqe0Jy.[saga]
2017/03/16(木) 18:49:32.93 ID:mBfbfeoZ0
妖精さんが差し出した分厚い豆本をお断りして、助手さんと顔を見合わせます。
「…………」
「…………」
二人とも無言でした。この無言の中に、我々の言葉にできぬ様々な思いが詰まっていました。
「……試験航行、してみましょう」
「そうしましょう、姐さん」
わたしはそっと船に乗り込みます。足を置いて、徐々に徐々に体重をかけますが、船がばらける気配はありません。
「やはり、妖精さん効果、という事でしょうか……」
思い切って重心を船に移動させましたが、びくともしませんでした。
「よかった。これなら大丈夫そうです」
そう笑顔で振り返った瞬間、私の足が何かを踏みました。
ガコっと足が沈み込みます。その瞬間、船が振動を始めました。この船、オールで漕いでいくタイプのはずなんですけどねー。
「よ、妖精さん? この隠れギミックは一体全体いかなる作用をもたらしちゃう感じの代物なんですか?」
動揺が頂点に達しそうなわたしに対する妖精さんの返答は、シンプルで簡単でした。
「あくせる」
妖精さんが言うが早いが、船は急加速。わたしは慣性の法則にのっとってうしろに倒れ込みました。
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