69: ◆AZbDPlV/MM[saga]
2025/01/15(水) 22:19:16.45 ID:rQ/7d1wt0
王馬 「とにかく、星ちゃんがどうしたいかなんだよね。ガチで野生の猫になりたいなら、これまでの星ちゃんとの思い出も泣く泣く忘れて“目の前の迷い猫”を今すぐにでも引っ掴んで追い出さないといけないからさ」
獄原 「そ、そんな…」
獄原の顔が青褪め、俺を見る。
王馬 「だってそうでしょ? 中身が元人間だからって、人間捨ててるようなヤツを、オレなら特別扱いしないよ。学園側だって、星ちゃんが一芸でも披露して、つまらなくない実験体だって、なんらかの利用価値があるとみなさない限りはただの猫。すぐにでもおん出すんじゃないのー? 置いとくだけムダだもん」
学園の生徒でなくなってしまったとなれば、王馬の対処は間違っていない。正論だ。王馬の話に獄原の顔から、ことさら色が消えて白くなる。
『おちつけよ、獄原。あんたも昔は山で過ごしていただろう』
獄原 「で、でも、それは山の家族がゴン太を育ててくれたからで……」
『大丈夫だ。見通しは甘いのかもしれないが、俺はガキじゃねぇし、覚悟もある』
獄原 「ゴン太は星君を大切な友達だと思ってるんだ…だから、ゴン太は星君と一緒にこの学園を卒業したい……もしそんな形で学園から出ないといけなくなっちゃったら、ゴン太は悲しいよ……」
他のヤツらなら、その場限りの言葉で納得させようとしているようにしか受け取れないが、獄原の場合は、心と言葉が純粋に直結していて、一切の誤魔化しがないことを解っている。
だからなのかも知れねーが“大切な友達”という、簡単に使える道徳的な安い言葉でも、獄原が言うと、すんなりと受け取れる好い言葉に変わってしまう。ここまでの言動が、獄原の俺に対する考え方の全てなのだろうと思うと、なかなかクるものがある。
王馬 「ゴン太の発言から推測すんの面倒だなー」
また体がヒョイっと浮き上がって、何かの上に座らされた。その何かは、王馬の膝の上だった。
しかもさっきの蹴りを学習したこいつは、今度は俺を後ろ向きにして前足の付け根を持つことで対策しやがった。引っ掻くこともできねぇ……。
王馬 「星ちゃんの意向としては、もうこの学園をでる方向で固まってんだし、いいじゃん?」
王馬 「じゃあ、外へ行こうか?」
何を考えているのか読めない瞳で、俺の顔を上から覗きこんでから、俺を抱えたまま王馬は立ち上がって、扉に向かう。そのまま俺を学園の外へ連れ出そうとしている王馬に、獄原が慌てて進路を塞ぐ。
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