66: ◆AZbDPlV/MM[saga]
2025/01/15(水) 18:25:56.12 ID:rQ/7d1wt0
獄原 「してないって」
王馬 「ふーん。だったら、他に思いあたることないの?」
猫……猫といえば、飼っていたあいつくらいしか……まさか……あいつの身になにかあったか?
『今は預けちまってるが…昔飼っていた猫くらいしか思い当たらねぇな』
獄原 「星君、猫さん飼ってたんだ。うーん…もしかして、その子になにかあったのかな?」
俺が猫飼いだと解った獄原も、俺と同じことを考えたようだ。
獄原 「ねぇ、星君。その預けた人の連絡先が解るなら、ゴン太が代わりに連絡して、猫さんの安否を確認してみるよ」
獄原の表情や声色から、上辺だけの心配ではないことが解る。確かに確認すれば、俺も獄原も安心はできるが……。
『気にはなるが、そこまでの面倒はみさせられねぇよ。気持ちだけ受け取っとくぜ』
俺の返答に、獄原は寂しそうに見つめてくる。
獄原 「……本当は気になるんじゃないの?」
『……まぁな』
それをしちまうと、未練ができちまいそうなのが困る。なるべくなら確認しないでおく方が、まだいい。あいつに何かあってこうなってるってんなら、なおさら。全部このまま引き受けてやるから、元気にやっていて欲しいと願う。
王馬 「訳さなくても、ゴン太の独り言でなんとなく察したけど……」
王馬 「飼ってた猫なんでしょ? 薄情なんだねー、星ちゃん」
王馬 「さすがは殺人テニスでマフィアを潰しただけあるよね!」
『どうとでも言え』
笑顔で煽る王馬を短くあしらう。コイツの煽りをまともに相手するのは時間の無駄だ。
獄原 「違うよ! 星君の声が寂しそうなの、ゴン太解るよ!!」
王馬の言葉をきいた獄原は、勢いよく立ち上がり、真剣な眼差しで王馬を見据えて感情的に反論する。
獄原 「星君は薄情な人なんかじゃないって、ゴン太は知ってる!」
王馬 「あいにくと、オレにはソレがさっぱりなんだよねー。殺人犯だし。だから死刑囚なんじゃん。立派な悪いヤツだよ」
獄原 「王馬君はどうして悪意のある言い方ばかりするの? ゴン太は悲しいよ……」
『もういい。この話はなしだ』
今度はぶつかりあおうとしているふたりを制止する。俺なんかのことでわざわざ争う必要はない。殺人犯であることは、間違いのないことだからな。
俺の言葉に、獄原は驚きながら身を乗り出す。
獄原 「ダメだよ! もしかしたらその猫さんがなにか手がかりになるかも知れないんだよ?!」
『俺はこのままでいい』
獄原の眼が大きく見開く。
『獄原。俺は戻してくれなんて頼んでないぜ』
獄原 「それは……そうだけど!! 星君は人間なんだよ? 猫さんのままなんて、いいワケない!!」
獄原には悪いが、一瞥してから嘆息する。
『あんたが熱くなったところで、俺の考えは変わらねぇよ』
獄原 「どうして? どうして諦めてるの?」
獄原の瞳に涙が溢れる。どうして俺のことなんかで涙を流そうとしているんだ? 真剣になれるんだ?
(こいつのお人好しには参るぜ…)
(こんな世話の焼かれ方は苦手だ…慣れちゃいねぇんだ)
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