61: ◆AZbDPlV/MM[saga]
2025/01/14(火) 10:47:10.56 ID:PdWpZk630
(しかし、猫になっちまうとはな………だとすりゃ、簡単に部屋からは出られねーか)
(かといって、ずっとここでおとなしくしているつもりもねーが……さて……)
この部屋の扉は内開き。しかも、ノブは押して引かなきゃ開かねぇタイプだ。今の姿じゃ、この部屋をひとりで出るというのは、やはりムリ筋だろうな。
(連絡なしに休んだとなれば、先公が部屋を訪ねるかも知れねぇが……しかし、それはいつになるかねぇ。今日とは限らねぇからな)
そんなことを考えてから、扉を仰ぐのをやめた。することも限られているしで、寝ちまおうとベッドに戻ろうとした時──
ピンポーン
部屋のチャイムが鳴った。時計を見れば6時。大体のヤツは今から起きだすような時間だろう。だとすれば、今起きて活動しているようなヤツは、体育会系で、朝練しているようなヤツらぐらいだろう。この時間に、わざわざ俺なんかを訪ねてくるようなヤツは思いあたらねぇ。
とりあえず、扉を爪で引っ搔いてみることにした。木製ではない扉を引っ掻けば、爪にイヤな感覚がはしり、不快な金切り音が脳天と耳に響いた。すると、相手に聴こえたのか、扉を何度か叩かれた。その後、なにもなかったように、部屋にまた静寂が戻ってくる。
(なんだったんだ?)
しばらく扉を仰ぎ見ていたが、これ以上なにも起こらなそうだと判断したところで、踵を返してベッドに飛び乗る。猫になっちまったせいなのか、しばらくして、自分の熱が布団に移って暖かくなってくると、すぐに眠気がさしてきた。
(このまま目を閉じれば気持ちよく眠れそうだな。二度寝なんざ、何年ぶりかね)
忘れてしまおうとしてきたはずの、在りし日の自分を、ふと振り返る。このまま戻れないようなら、学園の卒業を気にしなくていいし、あの監獄に戻ることもなくなる。そうすればどれだけ楽だろうな。
(しかしそいつはただの逃げだ。殺人を犯しといて、罪を清算しないなんざ、カッコつきやしねぇ)
いろいろと考えている内に、そのまま眠りに落ちそうになったとき、扉からガチャガチャと奇妙な音が聴こえて、眠りを妨害される。
(なんだ?)
なかなか鳴りやまない音を不審に思い、ベッドからおりようと体を起こした瞬間、ガチャンと大きな音がするのと同時に、聞き覚えのある声と見覚えのある姿が賑やかに部屋へ入ってきた。
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