18: ◆AZbDPlV/MM[saga]
2017/04/11(火) 13:04:43.01 ID:YNtF4pbK0
王馬 「星ちゃん、ゴン太泣かしたんだー。健気に星ちゃんのことを考えてるゴン太を泣かせるなんて、どうしてそんなヒドいことするのさ!」
『お前は少し黙ってろ』
俺の言葉自体は通じないが、鳴いて睨めば俺がなにを言っているかの想像はつくはずだ。とくにこいつだからな。解らないはずがねぇ。
王馬 「それ、怒ってるつもり? 迫力に欠けるねぇ」
挑発するように両腕を広げてくつくつと笑う。こいつを黙らせるなら、確かに人間に戻った方がよさそうだ。
獄原 「どうしてふたりは直ぐに争うの? こんな大変な問題があるときは協力し合おうよ……」
睨みあう俺たちに、悲しそうな表情をした獄原は弱々しく呟くと、ついにその瞳から涙が伝い落ちていく。
王馬 「あーあ、マジで泣いちゃったよ」
王馬 「星ちゃんのせいだからね!」
「……」
それに関しては否定できない。王馬と言い争うことで、結果、涙は流れたが、大元の原因は俺にある。
このままそっとしておいてくれたほうが、俺にとってはありがたいんだが…やれやれだぜ。
『獄原…お前さんの気持ちは充分伝わってる』
『だけどな、戻れるのか戻れないのかは解らねぇが、罪人である俺にこの先がない以上、今の姿の方がまだ生きている意味を見いだせるかも知れねぇんだ』
『しばらくこのままでいさせて欲しい』
獄原 「……うぅっ」
俺の言葉で獄原がなにを思ったのかは解らないが、なにかを言い返すことはなく、黙ってさらに涙を零す。
(悪いな、獄原)
王馬 「ねぇ、俺さっぱりなんだけどー? 仲間ハズレやめてくんなーい?」
獄原の通訳がなければ、ただの猫の鳴き声にしか聞こえていない王馬は、自分が理解できないうちから話を進めているようすの俺たちに、不満気に唇を尖らせていた。
獄原 「星君…しばらくこのままでいたいって……」
王馬 「あー。そりゃそうだよねー。人間に戻ったって、ここを出ちゃえば、いずれは絞首刑で処される身だもんね」
王馬 「そりゃ戻りたくないよねー」
獄原 「あ…」
王馬の言葉で、獄原は俺がいずれ来る処刑される日までは、このつかの間の自由を許されている存在なのだと思い出したようだ。
獄原 「でも…それでもやっぱり…間違ってるままは…」
90Res/117.39 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20