69:ヒヤコ ◆XksB4AwhxU
2017/03/20(月) 21:10:42.50 ID:/hzpnLfA0
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シャワールームの壁にもたれた舞園の背中が、ずるずる…と下がっていく。
腹から血をまき散らして、苦しげな息を吐いて、声を出さずに何かを呟こうとして、止めた。
『はあっ、はあっ……はあ……』
オレの手から力が抜けて、包丁が床に落ちた。舞園の首ががっくりと落ちて、動かなくなる。
同時に、オレもその場にへたりこんだ。――終わった。どういう意味の『終わった』かは
分かんねーけど、とりあえずそう思った。
□ □ □ □ □
桑田 「な、何であいつが……まさか、あいつも生き返って」
はは、だっせーな……手がガタガタ震えて、足は縫いつけられたみてーに動かねえ。
これは多分、舞園に殺されかけた時に感じた恐怖の名残ってやつか?
舞園 「あ……」
そこで、舞園もオレに気づいた。
オレを視界に映した舞園は、あの時と同じように何かを言いかけて、止めた。
てっきり、憎々しげに睨まれると思っていたのに、悲しんでいるみたいな顔。
オレは、その反応に拍子抜けした。
桑田 (なんで……なんで、そんな顔してんだよ。まともに話もしてねーオレを狙って、
苗木利用するぐらいには腹黒い女のはずだろ?)
菜摘 「あの子に話があるんなら行ったら?クラスメートなんでしょ」
桑田 「……そう、だな。舞園とはちゃんと話さねーと」
菜摘 「うん。なんか気まずいみたいだけど、あたしが見ててあげるよ」
がんば!と背中を押されて、オレは一歩踏み出す。
オレと、舞園。どっちが悪いかって聞かれたら、半分は確実にオレが悪いと思う。
桑田 (お前と違って、オレはあんだけ苦しみ抜いて死んだんだ。許せとは言わねーけど、
それでおあいこってことにはなんねーかよ?)
そうだ、あいこなんだ。だから、お互いに頭下げて、そんで終わりでいいはずなんだ。
よし、と決意を固めて。オレは舞園の方に歩き出す。あの夜の歪んだ表情が重なって見えて、
どうしても顔を直視できない。
桑田 「あ、あのさ……その……」
いざ向き合ってみると、言葉が出ない。
オレがぐるぐる考えているうちに、舞園が「桑田くん」と呼んだ。
当たり前なんだけど、敵意とかは感じない。
舞園 「私、あの……」
桑田 「や、やめろよ!まずはオレに言わせろ!……その、あの時は……
本当に、ごめんなさ「危ない!」
オレの言葉は、突然入ってきた苗木によって遮られた。
どうやら、苗木自身もとっさに出た言葉だったらしい。口をおさえて「あ……」とオレを見ている。
苗木 「ち、違うんだ……」
桑田 「……苗木、"危ない"ってなんだよ?オレがまた、舞園に何かするって思ったのかよ」
苗木 「違うんだ、桑田クン…そうじゃないんだ……ぼ、僕は…ただ……」
桑田 「……もういい」
オレは二人に背を向けて、さっさと自分の椅子に戻った。
ちら、と横目で様子を見ると、舞園は苗木と隣同士で座っていた。
あんな事起きる前だったら、苗木うらやましーなチクショーってなったんだろうけど、
今はびっくりするぐらい何も感じない。
いや、いまだに舞園かわいーってやってたら、ただのバカだろーけどさ。
キーン・コーン・カーン・コーン……
??? 『みなさん、おはようございます』
??? 『これより、第××回、希望ヶ峰学園入学式を執り行います』
菜摘 「ハァ?なんで今さら入学式?」
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