日向「神蝕……?」
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40:ヒヤコ ◆XksB4AwhxU
2017/03/13(月) 21:55:31.71 ID:ccxguUJC0
日向  「で、どうする?龍を誘い出したのはいいが、俺は弓なんて使えないぞ」

『変』で出した鉄パイプを構えた俺が聞くと、安広は「あら、簡単ですわ。私の文字を使えば」と微笑む。


"罠(わな)"


安広  「日向君、龍の気を引いてくださいます?石丸君は反対方向に逃げて小石でも投げながら、
     龍を少しずつ私の方へおびき寄せてくださいな。気が向いたら文字を使っても構いませんことよ」

石丸  「了解した!!」ダッ

日向  「分かった……信じるぞ、安広!!」

安広  (……信じる、ですか……この私が、信頼を受けるなんて……)

安広  (もうそろそろ、嘘をつくのも疲れましたし……悪くありませんけど)カッ!

手を振って、地面に『罠』を仕掛けていく。元はウサギを捕る網からできた象形文字だが、
彼女の想像力――地下のギャンブル階を巡る中で見てきた数多のゲーム器具。
たとえば電流の流れたつり橋、たとえば針天井。それらが文字に広がりを与える。

日向  「――ら、あああっ!!こっちだ!!」ブンッ

石丸  「日向くん、深追いは禁物だ、"下がりたまえ"!!」カッ

日向  「……えっ?」ガクッ

石丸が声をあげると同時に、日向の足が操られるように後ろへ下がる。
次の瞬間、日向が今までいた地面に龍の爪が突き刺さっていた。

石丸  「僕はこうして、相手を"支配"することができるのだよ。恐ろしい文字だろう?」

日向  「いや…おかげで助かった。いい文字だ」

石丸  「……まったく、君という男は分からないな」スッ

差し伸べられた手をありがたく取ると、ちょうど安広も準備が終わったらしい。

安広  「行きますわよ……」カッ

地面すれすれを低空飛行する龍の口が、がぱっと開く。
安広が手を挙げると、その巨体を地面から現れたトラバサミが次々に挟んだ。
まるで活け作りのように、龍は地面に縫いつけられる。じたばた暴れる龍の口を指さして
「日向君、今です!」と安広が合図した。

日向  「は、あああっ!!」ザシュッ

龍の口を、真一文字に切り裂く。真っ赤な血が視界に飛び散って――その向こう、
喉奥に白く光るものが見えた。俺はその勢いのまま龍の首に刀を差し込んで、
ぐいっと切り落とす。

日向  「あった……鍵だ」

安広  「呆気ないものでしたわね。ともかくこれで脱出できますわ……早く学園へ帰りましょう」

日向  「だな。森の景色にも飽きたところだ」

俺たちは並んで歩き出す。闘って龍を誘き出しているうちに、扉からだいぶ離れたところまで
来てしまっていた。石丸がつけておいた樹の印に従って、白い扉を目指す。

石丸  「しかし、君は不思議な人だな。予備学科でありながら癖の強い77期をまとめあげ、
     彼らの司令塔として君臨している……一体、君は何者なんだ?」

安広  「私も不思議ですわ。何の才能もないといいながら、こんな非常事態でも全く
     あわてふためくことがない……今までどんな日常を過ごしていらっしゃったのか、
     興味が沸いて来ました」

日向  「……別に、普通だ」

しまった、78期とはなるべく距離を置くつもりだったのに……。
石丸と安広は、正体不明の予備学科生に興味を持ったらしい。

どう遠ざけようか考えながら扉に鍵を差しこみ、開ける。
そこは学校の校庭だった。俺たちが出てきたのと同じ、白い扉が沢山浮かんでいる。
バスケットゴールの下に仲間達が集まっているのを見つけると同時に、向こうからも声があがった。


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