29:ヒヤコ ◆XksB4AwhxU
2017/03/12(日) 19:14:23.34 ID:uk5v1yXc0
朝日奈 「おーっす、日向!先にいただいちゃってるよー」パクパク
罪木も泣き止んで落ち着いたのか、ジュースをちびちび飲んでいた。
……と、そこで朝日奈の隣からものすごい覇気を感じる。このすさまじい筋肉……まさか……
大神 「大神さくらだ……話は聞いている。朝日奈が世話になったようだな、礼を言おう」ギュッ
日向 「日向創だ、よろしく。…なんで俺の手をニギニギしてんだ?」
大神 「いや、立派な体格に似合わず細い指だと思ってな。あまり鍛えておらぬ者の手だ。
実に惜しい……お主、格闘技の道に進む気はないのか?」
日向 「ラグビーは微妙に興味があるんだが、格闘技はちょっとな」
日向 (こいつが"超高校級の格闘家"か…ドッキリハウスの像は等身大だったんだな)
食事の間、大神から西地区の話を聞いた。
予備学科の校舎で目覚めた大神は、戸惑う予備学科の生徒たちを率いて『始』を撃破して回っていたらしい。
あれと生身でやり合ったのか?
大神 「予備学科はまさに地獄だ……戦闘に使える文字を持つ生徒がほとんどおらぬ。
隣で目覚めた女子は"優"であったし、椅子を投げて"始"に対抗した勇敢な男子もいたが、
そやつの文字は"勉"であった。昼間死んだのは、全員が予備学科だ……。
我はこれからも、西地区で蝕からあの者たちを守りたいと思っている……それが贖罪となるかは
分からぬが」
日向 (贖罪……確かこいつは、江ノ島の内通者だったんだっけか。体育館に顔を出さなかったのは
それも理由のうちなんだろうな)
日向 「でも、一人で大丈夫なのか。だって、闘えるのはお前くらいしかいないんじゃないのか」
大神 「我を案じてくれるのか?よいのだ。それに、予備学科の生徒たちも我を必要としてくれる。
それだけで十分だ」
罪木 「……強いんですね、大神さんは……それに比べて、私は……」
大神 「罪木よ、あまり己を卑下するな。傷つけることは容易いが、癒すのは難しい」
罪木 「でも…私、ひどいことを言われても言い返せないし……いつも、足がすくんじゃって……」
大神 「"強い"や"弱い"で人を括ることに何の意味がある?
現在(いま)を満足できる物にする方がよほど、有意義ではないのか。
我には、人を癒せるお前の方がよほど強いように思えるぞ」
しかし、言われた罪木は浮かない表情だ。
罪木 「わ、わたし……私……さっき、西園寺さんに突き飛ばされた時、ほんとに一瞬ですけど……
あの人のこと、すっごく"憎い"って思ったんです。私、全然強くなんか…ないんです…」
日向 「!」
罪木 「私がこんなに我慢して"あげてる"のに、それにも気づかないで……色々な理由をつけて、
人を傷つけて……なのに、皆の輪の中に入れてもらっていて……ずるいって、思ったんです。
悪いことをしたなって思う前に、"なんでまた会っちゃったんだろう"って……
日向さんが止めてくれなかったら、私……また」
日向 「罪木、それは当たり前の感情だ。お前が理不尽だと思うのも、悪いことじゃない。
いつかその気持ちを素直に西園寺へぶつけてみればいい。それをどう受け止めるかは
あいつ次第だけどな。その時にあいつと分かり合う努力を続けるか、それとも西園寺を
自分の世界から追い出すかを選ぶのは、お前の自由なんだから」
罪木 「私、また西園寺さんに取り返しのつかないことをするかもしれないんですよ!」
日向 「そうなったら俺が、この厚い胸板で止めてやる。弐大のお褒めにあずかったこの胸板でな!」ドヤァッ
そう答えると、罪木は「ぷっ」と吹き出した。いつもの愛想笑いとは違って、本当に
こみ上げてきた、という感じの笑顔だった。俺は、学級裁判で全てさらけ出したのが、
いい方向に吹っ切れてくれている事を願った。
大神 「日向……お主、本当に予備学科とやらなのか?」
日向 「ああ。俺は正真正銘の凡人だぞ」
大神 「それにしては、随分と77期の者たちから重んじられておるのだな……」
日向 「便利に使われてるだけだ。俺が持ってる才能なんて、せいぜいパンツを脱がせる程度のもんだ」
大神 「パン……なんと?」
おっと、うっかりしていた。
俺は失言を誤魔化すように、ガツガツとチーズドリアをかっこむ。
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