193:名無しNIPPER[saga]
2017/07/14(金) 20:44:32.59 ID:sE0XGrgQ0
私は、暗い中を漂っていた。
その中でぼんやりと光る場所がある。そこに、糸で吊るされた人形がひょこひょこと歩いてきた。
モノクマ「ある所に、一組の夫婦がありました。お父さんは極道の組長。お母さんは元芸者。
日陰者の二人でしたが、仲良く、楽しく暮らしていました」
モノクマ「しかし、体の弱かったお母さんは、息子を産んですぐに死んでしまいました。
お父さんは、若頭をつとめる弟の裏切りにあい……」
パンパーン…ザァァァ……
モノクマ「ある雨の日に、殺されてしまいました」
お父さん人形が、ぐったりと血のりの海に沈む。
モノクマ「残されたのは、やっと歩けるようになったばかりの男の子。
その名を冬彦といいました」
パッと明るくなったそこには、赤ちゃんの人形が座っていた。
モノクマ「九頭龍組は二つに分かれます。裏切り者の若頭をいただく派閥と、直系の血筋である
冬彦くんを次期組長とする派閥です。二つの勢力は激しく争い、多くの血を流しました。
――冬彦くんの意志など無関係に」
しくしく。しくしく。折り重なって倒れる死体の中で、冬彦の人形が泣いている。
それをなぐさめる、ペコ人形。
モノクマ「冬彦くんの心の支えは、共に育ったペコちゃんだけでした。
誰もが自分を、権力の道具としか見てくれません。誰も、自分を愛してくれません。
冬彦くんはいつしか、逃れようのない運命を呪うようになりました」
九頭龍 『オレが九頭龍の直系だから……みんなオレが組長になるのが当たり前だと思ってる。
やめてくれ!!オレはそんなの嫌だ!!オレは、ペコがそばにいて、毎日が平和な……
そんな人生が欲しいだけなんだ!!』
モノクマ「その時。冬彦くんはひらめきます」
九頭龍 『そうだ、オレの代わりに組を継いでくれる奴がいればいいんだ!』
モノクマ「それが、冬彦くんの悲しい空想の始まりでした……」
九頭龍 『オレには妹がいるんだ。オレより背が高くて、オレに顔がそっくりで。
頼りがいがあって、組の若い奴らには姐さんって慕われてる』
九頭龍 『ちょっと口が悪くて、気が強くて……あ?ヤクザならそういう奴の方がいいだろ。
肝が据わってて、血を見てもビビりゃしねえ。本当にいい妹だぜ』
九頭龍 『九頭龍組を継ぐのにふさわしいのは、あいつの方だ』
モノクマ「しかし、空想の日々は終わりを告げます。次期組長としての正当性が欲しい冬彦派の人々が、
彼を"超高校級の極道"として希望ヶ峰学園に入れてしまったのです」
モノクマ「彼の逃げ道は、今度こそ完全に閉ざされてしまったかのように見えました。
――"人類史上最大最悪の絶望的事件"が起こるまでは」
また、場面が切りかわる。血まみれの人形たちの中で、冬彦人形が笑っている。
モノクマ「九頭龍冬彦は、運命に勝利しました。もう、空想の妹に呪われた運命を背負わせる
必要はないように思えました」
モノクマ「しかし……空想の妹はバーチャルの世界で復活を果たします。
偽物の記憶と"九頭龍菜摘"という名前を得て」
――え?
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