192:名無しNIPPER[saga]
2017/07/14(金) 20:44:01.16 ID:sE0XGrgQ0
九頭龍 「いいかペコ、ちゃんと覚えろよ。こいつは菜摘。菜っ葉を摘むって書いて菜摘だ」
辺古山 「申し訳ありません……」
菜摘 「いいって。ペコもまだ調子悪いんでしょ」
九頭龍 「……」じーっ
菜摘 「な、なに?どしたの、お兄ちゃん」タジタジ
九頭龍 「……あいつになんかされてないだろうな」
菜摘 「あー、もしかして桑田のこと言ってる?ただの友達だって。何もないない」
九頭龍 「ならいいけどよ……いいか、ああいう奴は口説き文句がそれと分かんねえもんなんだ。大体…」
辺古山 「坊ちゃん。ひとまず話は後にして、まずはこの夢から出ませんか?」
九頭龍 「そ、そうだな…菜摘、足元気をつけろよ」
転ばないように手を差し出してくれる兄は、
記憶の中と同じように優しい。
なのに、それがまるで夢の中の出来事みたいに感じられるのは、どうしてだろう?
テクテク…
菜摘 「うわ、血の池だ、気持ち悪……二人とも、よく冷静でいられるね」
九頭龍 「ああ、隔離型が来るってのは分かってたからな。心の準備だけは、どうにか」
菜摘 「そっ、か。いいな、そういうの」
辺古山 「お嬢?」
菜摘 「あ、ううん。なんでもない」
菜摘 (お兄ちゃんには、仲間がいるんだ……いいなあ)
たいして広くない空間の、一本道を歩く。
そのうちに、開けた場所に出た。
菜摘 「……っ!?」ズキンッ
髪を揺らして笑う、巨大な女。
それを見た瞬間、頭に鋭い痛みが走る。
菜摘 (なに、これ……)ズキズキ
九頭龍 「……なるほど。テメエがここの主ってわけか」
夢の主 『いかにも。……されど、しばし待て』
辺古山 「……?」
女は、私を見つめて――本当に美しい、慈愛に満ちた笑みを浮かべた。
夢の主 『久しいのう……我が娘よ。うつつの寝心地はどうじゃ?』
菜摘 「……は?」
クズペコ「「わが……娘?」」
――何を、言ってるの?
夢の主 『まだ思い出せぬか。菜摘よ……そなたの甘く芳しき想い出も、その身に宿す心も。
頭の上から足の先まで、すべて』
夢の主 『妾が作り出したもの。そなたは、一つの泡のごときもの――』
九頭龍 「テメエ…何ふざけた事抜かしてやがる、菜摘が泡だと?」
夢の主 『分からぬか。なら……思い出させてやろうぞ』カッ
瞬間、女の腹がパックリと割れて、無数の白い手が伸びてくる。
声を上げる間もなく『それ』にからめとられて、私の意識は真っ暗な底へ落ちた。
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