191:名無しNIPPER[saga]
2017/07/14(金) 20:43:35.46 ID:sE0XGrgQ0
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菜摘 「その理由に気づいたのは、ずっと後だったんだけど」
桑田 「……」
菜摘 「ほら、いつか買い物付き合ってもらった時にさ。パン屋で花村先輩と弐大先輩に会ったでしょ?」
菜摘 「二人が"知らない"って言った…あれが、本当だったんだ」
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佐藤 「……閻魔様ってのは、モウロクしてるらしいね。あんたみたいな悪党が
生き返るなんて」
菜摘 「あんたこそ、犬のくせに偉そうに机座ってんじゃないわよ。小泉の靴でも舐めてれば?」
佐藤 「なんだって!?」ガタッ
言い争う私たちを、クラスメイトは遠巻きにしている。
いつものことだ。私と佐藤がお互いの性質を嫌悪しているのは明らかだったから。
でも、その日は違った。
「……おい、誰か止めてこいよ」
「嫌だよ、怖えもん」
「つーかさァ」
――誰だっけ、あいつら。
◆◆◆◆
桑田 「……んん?あいつ"ら"ってことは、佐藤ってやつもか?」
菜摘 「うん。でも不思議なんだよ。机にはそれぞれ名札がついてるんだけど、私と佐藤の机、ちゃんとあるんだ。
寄宿舎にもちゃんと部屋があるし……でも、朝の出席で呼ばれたことは一回もなかった」
菜摘 「九頭龍菜摘の存在を証明してくれるのは、私自身と、それから……あんただけだったんだ」
菜摘 「少しずつ、記憶が鮮明になっていく。小泉真昼に嫉妬していたこと。予備学科で腐っている奴らを
笑って鬱憤晴らししてたこと。組の若いの使って、小泉のネガを全部燃やしたこと……」
菜摘 「最初は、自分ってこんなにひどい奴だったんだ……って苦悩した。
でもね……気づいたんだ。それら全てがあいまいで……そうだったみたいなようにも思えるし、
そうじゃなかったみたいな気もする」
菜摘 「自分の記憶すら……たしかに自分のものだと信じられない。
その孤独が、あんたに分かる?」
桑田 「……分かるよ」
菜摘 「そんなの、口ではどうとでも「大和田と、苗木と……あとは、不二咲か」
桑田 「男子ではそこらへんとつるんでたな。たまに舞園とか、朝日奈も一緒で……ゲーセン行ったり、
買い食いしたり、まあ普通の高校生やってた」
桑田 「オレってこんなに幸せだったんだ……って知った時にさ、すげえ後悔が来たよ。
なんで忘れてられたんだ、なんで……殺しちまったんだ、って」
菜摘 「……」
桑田 「オレはもう二度と、あんな幸せを感じる事は許されない。
なのに死にたくない、こんな怖い所から抜け出したい、そう思ってる自分に気づいて……」
桑田 「また、苦しくなる。その繰り返しだ」
菜摘 「……ははっ、私たち、ホント似た者同士だね」クスクス
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