11:ヒヤコ ◆XksB4AwhxU
2017/03/08(水) 17:30:11.99 ID:r4P7jXfa0
体育館前のホールを抜けて、廊下を走る。化け物の足元をくぐりぬけて、
床に浮かぶ円……化け物の召還陣を跳び越えて、俺たちはただひたすらに、外を目指した。
バタァンッ!
日向 (しかし、廊下の扉を蹴破った俺たちが見たのは……さらなる地獄だった)
豚神 「くそっ……もうこんなに死者が!」ワナワナ
化け物が出てきてから、まだ4、5分しか経っていない。その短い時間で、
校庭は血の海になっていた。薄暗い中、頭のない死体を引きずる化け物。泣き叫ぶ生徒を
バリバリと足から食らっていく化け物。まだ温かい内臓を……舐めて……しゃぶって……
朝日奈 「う、うぅっ……!」
へたりこんだ朝日奈は、わずかな胃液だけを吐いた。口元をジャージの袖でぬぐって、
「ひどい……!」とつぶやく。そんな中、十神はネクタイをゆるめて鎖骨の文字を見せた。
やわらかい脂肪に埋まった鎖骨に、文字がある。
豚神 「日向、お前の文字は何だ?」
日向 「えっ、と……"変"だ。変わるって字だよ」
豚神 「なるほど、使い勝手はよさそうだな。ちなみに俺は"偽"(いつわり)だ。
あの学園長が言っていたな。"文字を使え"と。つまり、俺たちに与えられた能力は……
"漢字を具現化する能力"だと考えられる」
豚神 「死者が蘇り、消えたはずの学園が存在するこの世界…何が起こってもおかしくはあるまい。
しかし、まさか本当の意味で"闘い"とはな……分かっていたら、もっと使い勝手のいい
文字にしたぞ!」
十神は手ごろな枝を拾い上げると、近づいてきた化け物の口に
豚神 「お、おおおッ!!」ブンッ
つっかえ棒にして差しこんだ。
化け物 「……グルルッ……」ガジガジ
化け物 「ガアアアアア!!」バキンッ!
豚神 「!……やはり、この文字でなければ対抗できないのか!」
枝を噛み砕いた化け物は、その勢いのまま十神に飛びかかって倒した。
胸に乗りかかられて、十神は化け物のアゴをがっしりつかむ。
豚神 「くっ……日向、そいつをっ、朝日奈を連れて逃げろ!」
日向 「バカ野郎、お前を見捨ててなんて行けるか!」
豚神 「この俺が"頼んで"いるんだぞっ……十神の信念を、曲げてまでっ…ぐっ、」
化け物はさらに力をこめる。鋭い牙をつたって、十神の高級そうな服にダラァッ…と
よだれがこぼれた。十神は気持ち悪そうに眉をひそめて、もはやこれまでかと目をつぶる
日向 「仲間が死ぬところなんて……もう二度と見たくないんだよ……」シュルッ
俺は、深緑色のネクタイを外して握りしめた。
もう、うんざりだ。仲間の涙を見るのも……成すすべもなく、死んでいく仲間を見送るのも……
自分の無力さに苛まれるのも。
日向 「変……変……変わる……」
だから、俺に、武器を。現実に立ち向かう、力を!
日向 「変われ……変われぇっ!!」カッ
"変"(へん)
朝日奈 「……きゃっ!」
朝日奈 「……ひな、た?」
まばゆい光がおさまった後。俺の右手にはネクタイが変化した、一振りの刀が握られていた。
辺古山が使っていたのと同じ、切れ味のよさそうな日本刀だ。
日向 「らあああッ!!」ブンッ
化け物 「!?」
肉を斬る確かな手ごたえが、刃から手につたわる。十神の顔を噛み千切ろうとしていた
化け物のアゴは、俺の一閃で血を吹き出して地面に転がった。
その隙に這い出した十神は、朝日奈を背中にかばって立つ。
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