109:ヒヤコ ◆XksB4AwhxU[sage]
2017/04/01(土) 10:42:29.43 ID:fPDAiR9v0
【食堂】
20年の短い人生の間で、全知全能になったり世界を破壊してみたりバーチャルでコロシアイをしてみたり。
もう脳が許容量を超えてしまったというか、たいていの事では驚かないくらいの体験をしてきた。
でも。
今、目の前にあるこいつは。
日向 「な、七海……?」
ナナミ 「……うん。私だよ、七海千秋だよ……会いたかった、日向く」がくんっ
日向 「な、七海……七海!?」
左右田 「あーあー、エネルギー切れか。ちょっと補給してやっから待ってろよ」ゴソゴソ
トレイを持ったまま立ち尽くす俺をよそに左右田は、椅子にぐったりと座った七海のうなじにコードを繋ぐ。
七海の頭がパカッと左右に開いて、中の基盤が丸見えになった。左右田はそこに手を突っこんで
何か調節している。
日向 「七海……お前、生き「おいおい日向……よく見ろよ、これが人間の関節か?」
よく見ると、黒いワンピースから覗く手足は球体関節だった。
目を閉じた七海の顔も、そっくりに造ってあるだけの人形だ。
俺の反応が思わしくないのを見て、左右田は「なあ、なんでそんな顔してんだよ」と不満げだ。
左右田 「オメーがあんまりショック受けてたみたいだからよ、七海を生き返らしてやったんじゃねえか。
そりゃ飯は食えねーし生身じゃねーけど、ちゃんと日向のことも覚えさせたんだぞ。
あ、そっか。ゲームできなきゃ七海じゃねーよな。うっし、待ってろ!今ちょっと人工知能の
基盤作り変えてやっからよ!!」
日向 「違う……こいつは、七海じゃない……」
左右田 「オメーの言わんとすることは分かっけどよ、七海だってプログラムだったんだろ?
このナナミ−Rと何がちげーんだよ」
日向 「違う!!七海には魂があった!!!心もあった!!!お前が……お前がやったのは、七海の死への冒涜だ!!」
左右田 「だから、人間の七海はとっくにあの世行ってんだろ!!いつまでもプログラムにこだわってねーで
前向けよ!!そのために七海の見た目が必要ならオレが造ってやったこいつを使えばいーだろ!?」
日向 「そんなッ……そんなことを、言うなぁぁぁ!!!」
気がつくと、俺の拳が左右田の頬を殴っていた。
殴られた左右田は床に転がって(なんでだ)と言いたげな目で俺を見上げる。
それ以上何も言う気になれなくて……俺はさっさと食堂を出た。
□ □ □ □ □ □
ざわついていた食堂が、少しずつ静まっていく。小泉は「あのさ……」と言い辛そうに肩をすくめた。
小泉 「アタシは……左右田の意見も分かるよ。だけど……日向は、千秋ちゃんのこと、本当に好きだったんだよ。
……だから、あんなストレートに言うのは、ちょっと……」
豚神 「しかし、左右田にしてみればよかれと思ってしたことだ。一方的に責めるのも不公平だろう?」
小泉 「だけど……!人の心があったら、あんな言い方「今、こいつを人非人と表現するのは、人として
正しいことか?」……う」
豚神 「お前は自分の感情に振り回されて、本質を見られない所がある」
豚神 「だが左右田、日向の怒りはプログラムの七海を否定されたことだけではないと思うぞ。
そこにいる七海の姿をした人形……お前がそれを道具として軽んじたと、感じたのではないか?」
―― 七海の見た目が必要なら、オレが造ってやったこいつを使えばいーだろ!?
―― そんなッ……そんなことを、言うなぁぁぁ!!!
左右田 「……!!」
豚神 「人間の心は、機械のように測定できないからな。……そのケータイは別のようだが」
セブン 『白夜、私はケータイではない。フォンブレイバー・7だ』
テーブルの上に置かれた左右田のケータイが、パカッとひとりでに開いた。
真っ暗な画面に、緑色のドットで出来た目と、レベルメータの口が表示される。
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