106:ヒヤコ ◆XksB4AwhxU
2017/04/01(土) 10:40:44.39 ID:fPDAiR9v0
罪木 「でっ、でもぉ……おかしく、ないですか?こんな大きな音がしたのに、誰も来ないなんて……」
日向 「職員室の先生モノクマも同じ動きを繰り返していたしな。ただのプログラムだろ。
おまけに見てみろ、誰もいない」
俺は瓦礫を跳び越えて中へ入った。艶やかなマホガニーの机。きっちり整理された本棚。来客用の革ソファ。
全部がきれいすぎる。誰かがいた気配なんてまるでない。
日向 「夜時間と朝の放送は、ここから行われていたんじゃなかったのか……」
そこで、床にしゃがみこんでいた罪木が「こ、これ…落ちてたんですけど」と拾って見せた。
日向 「人形……だよな?神社とかに奉納するやつだ」
罪木 「あ、あのぉ…学園長先生って、いつの間にか消えてたり……ほんとに人間なのかなって
疑っちゃいますよね……ふゆぅ、ごめんなさい!偉そうに"疑っちゃいますよね"なんて
言っちゃって…でっ、でもっ…日向さんがそう思ってないなら……」
日向 「いや、その意見に賛成だ。問題はこの人形が、学園長が生き返ったこととどう関係があるのか……」
狛枝 「ますます謎が増えていくね。この先にどんな希望が見えるのか…今から楽しみになってきたよ。
君が嫌じゃなければ、これからも協力を惜しまないつもりだけど?」
日向 「まずは今日の蝕を乗り切ってからだな」
狛枝 「分かった……あと一分か。僕達も外へ出たほうがいいよ」
腕時計を見た狛枝が先に立って走る。階段を駆け下りて一階に出た所で、校庭に真っ黒な影が落ちた。
カッ!!
空島が太陽にぴたっと重なって、一瞬だけ光る。『始』と同じ黒い円が地面に浮かんで、そこから
ずるっ…と化け物が出てきた。鬼だ。一つ角の鬼が、手に大きな団扇を持って、『祭』と書かれた
ハッピを着ている。靴箱の所にいた江ノ島の隣にも円が出て、鬼が飛び出してきた。
江ノ島 「うぅっ……毎回毎回、ほんっとうざったい!!」カッ
"魅(み)"
江ノ島の手から小さなハートが出て、鬼の額に『ぺたっ』と貼りつく。
さっきまで殺意をみなぎらせていた鬼はあっという間に目をハートにして、ボディガードのように
ぴたっと江ノ島の隣についた。
日向 「あの文字が、絶望していた頃の江ノ島になくてよかったな」
そのまま同じ鬼をなぎ倒していく鬼を見た俺の呟きに、狛枝と罪木が赤べこのようにブンブンと頷いた。
罪木は、絶望から解放された今でも江ノ島に特別な思い入れがあるらしい。
霧切 「祭……元は供物を捧げ、奉るという語源……私たちを殺してその死体を供物にするのが目的と
いうのでしょうけど、そうは行かないわ」タッ
走る霧切の向こう、校庭のど真ん中に、炎が立ち昇る祭壇が見えた。鬼たちは生徒の死体を運んでは、
その炎に投げこんで、ケタケタと陽気に踊っている。
霧切 「弱点は頭と心臓……人間と変わらないのね」スッ
ホウキを構えた霧切は、そのまま鬼の頭にフルスイングした。ぐしゃっといい音を立てて倒れる鬼に、
苗木が「ひいっ!?」とおびえている。
苗木 「き、霧切さん!僕の制服に血がかかって……うわあ!!こっちに来ないで!!」ブンッ
モップで鬼の団扇を弾き返した苗木の背中から、腐川が「しょうがないわね…」と進み出た。
持っていた文庫本を開いて、眼鏡を直す。
腐川 「"我輩は猫である、名前はまだない"!!」カッ
"語(かたり)"
光がおさまると、腐川の背後に巨大な三毛猫が現れた。ぎょろぎょろと目を動かし、鬼を見つけると
「ニャーゴ」と鳴いて、その大きな前足で叩き潰す。ぐちゃっ、ぐちょっと嫌な音をたてて飛び散る鬼を
見ないように目をつぶった腐川は、「"すると嘉助が突然高く言いました"」と続ける。
腐川 「"そうだ、やっぱりあいづ又三郎だぞ。あいつ何がするときっと風吹いてくるぞ"」カッ
ゴオッと風が吹いて、腐川に飛びかかろうとしていた鬼が吹き飛ばされた。
又三郎 「……」
天井にとんっと両足をついた赤毛の少年。マントの向こう側が透けて、きらきら輝いていた。
風の又三郎がマントを翻すたびに、風が吹き抜ける。飛ばされた鬼は廊下の壁に背中を叩きつけられて、
びくん、びくんと痙攣した後、動かなくなった。
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