メイド「私の嫌いな貴方様」
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78: ◆TEm9zd/GaE[sage saga]
2018/07/08(日) 18:36:14.95 ID:vVNAR02v0




私は走っていた。無我夢中に。
肩口で風を切るこの感覚。振り上げる足は、疲れているのか、重い。けれど、走れないわけじゃない。
むしろ、なおも全速で足を動かす。速く、速く速く、速く――――。
ただ、足を動かす。あの人にもっとよく見てもらうために……。
私の理想。私の計画。私の悲願。そのために――。


女教師「おっ! 頑張ってるね〜、女ちゃん。がんばれ〜」


よっしゃきたあっっ!!!

これだ。これだよ。これ! 私が求めていたものは。


誰だ。お姉ちゃんにいいところが見せられないとか言ったやつは。
今! 実際に!  お姉ちゃんは私を見て、私の走りを見て、私に……私にぃいっっ!!?


ぐへへへへ、もう私はなんにでもなれる気がする。
いや、なれるね。ウサイン・ボルトにだって。なれるとも。
いけ、私! でんこうせっかだ! ぴっぴかちゅう。

お姉ちゃん。あなたに見てもらえるのなら、バターになるまで走ります!
なんだったらぺろぺろお姉ちゃんのバター……おっと下品だったな。自重しないとR板に転移されてしまう。


さてさて、お姉ちゃんの提案……? 指導……? で走り込みをしているわけだが。

走り始めて最初は、がっかりした。がっかりして、やる気は低迷した。昨今の出版業界のように。
なんでこれから走らなくてはいけないのか、と。やすやすと出来るか、と。
意味わかんねえよ。これが陸上部だったら喜んで走るよ。さっきのバターのくだりじゃないけど、それこそ犬のように。

だって、お姉ちゃんによく見られたいんだもん!


でも、外周じゃあお姉ちゃんの目に入らない。
陸上部じゃないから、タイムがよくてもお姉ちゃんに褒められない。
そりゃ速く走れば驚かれるだろうけれど、驚くだけだ。

好意的に受け取ってもらえれば、やる気があるな、と思ってもらえるかもしれないけど、
なんでこいつ外周なんかに本気出してるの、陸上部行けよ、引くわ〜などと思われたら嫌だ。

そんな可能性万に一つもないと思うが(優しいお姉ちゃんに限って、ね)
万に一つも可能性があると思うと、なかなかやる気が出ない。

そもそもやる気云々はお姉ちゃんに見てもらうという前提があってこそのお話だ。

この状況じゃ仕方ないって。
もしもお姉ちゃんが頑張れーって応援してくれたら五里霧中だろうが無我夢中で走るんだけどなぁ……。

などと思考も足もたらたらとさせながらお嬢様と一緒に――もっともお嬢様は走ること、というより運動そのものが苦手なようだが――学校回り走っていると、
一周して、校門に戻ってきた。

そこには――いた。おらっしゃった。おわしあそばせた。

お姉ちゃんが。いたのだ。


女教師「女ちゃんにお嬢様さん――自分のペースでいいから頑張って走って〜。あと、二十分!」


私は本気を出した。




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