64: ◆TEm9zd/GaE[sage saga]
2017/04/07(金) 20:41:45.62 ID:dG9Z67sl0
女「あれ……?」
はたと違和感。
ネックレスを見る目が見開いた。
女「……ちょっと待て……?」
――何で好きか嫌いかの話になったんだ?
確かに昔のお姉ちゃんのことが好きだ。でも、今は今だ。昔には戻らない。どうにもならないことをウジウジと考えても不毛なだけ。そんなの校長の頭だけで十分だ。
もし、変わっちゃってたらなんて――――それがどうした。
変わっちゃったお姉ちゃんのことは好きじゃないのか? もしかしたらもっと好きになるんじゃないか?
それに――
お姉ちゃんが私にキスしてきた夢が頭に焼き付いて離れない。あれは……どんな年齢のお姉ちゃんも同じだってことなんじゃないか。そう深層心理では思ってるんじゃないのか。
女「ぁ……っ!」
思い出せ。再会したときを。
私がどうして帰ってこなかったのか聞いたときの申し訳なさそうな顔を。
ああいう反応をするってことは少なくとも帰れないことを気にしていたんじゃないか? 申し訳ないって思うくらい私のこと気にしてたんじゃないか?
女「なんだ……」
私が今のお姉ちゃんに対してもっている気まずさ。いや……一方的な、が抜けている……。
それが違和感の正体。
私はただお姉ちゃんが私との約束を守らなかったことに腹をたてていただけだ。
約束が守られなかった=お姉ちゃんのなかで私のことがどうでもよくなった。という図式が成り立って、お姉ちゃんに対してどういう思いを抱けばいいのか分からなくなっただけだ。
でも、お姉ちゃんは、どうして帰ってこなかったのか、という問いにすまなさそうな顔をしていた。つまり、私のことがどうでもよくなった訳じゃない。
だから――
女「んっ――」
ネックレスに口付けた。
そのキスには、さよならをこめて……
女「じゃあね、初恋」
私の好きな人はもういない。遠い昔に消えてしまった。
それでいい。腹を立てる必要はない。帰りをもう待つこともない。
それでも遠い昔の面影は見れるから。
カ ワ ッ チ ャ ッ タ
大人になったお姉ちゃん。
きっと彼女をまた好きになる。変わっちゃってても、大人になっていても――像が重なる――同じお姉ちゃんだから。
女「ああ――馬鹿じゃないの……」
きっとお姉ちゃんが赤ん坊になっても好きになれる。そんな考えが浮かぶくらいにはとんだお馬鹿さんだ。
どんなお姉ちゃんも好きになる。だって、ドキドキしたから……夢の中で幾重のお姉ちゃんにキスされたとき。
お姉ちゃんのことが好きになる。そのことが本能に刻み込まれてるんだろう、きっと。
ネックレスを首から下げた。
鮮明に思い出せる。
彼女の匂い。――どんな香水をつけてるのかな。
大人になった容貌。――化粧の仕方、今度教えてもらおう。
――私は、初恋の人をもう一度好きになるかもしれない。
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