63: ◆TEm9zd/GaE[sage saga]
2017/04/06(木) 21:47:08.65 ID:hCWET/FR0
………………。
…………。
……。
ガバッと、
物凄い勢いでベッドから身を起こした。
お姉ちゃんからキスされるというあまりにもな非現実さに動転、はあはあと息を切らしながら気を落ち着ける。
女「ゆめ……?」
分かっていたことだった。非現実さといったら部屋からいきなり電車内に飛ばされたり、何よりお姉ちゃんが二人出てきたりと、とにかくおかしいものだった。
あり得ないリアル。つまりは夢。虚ろの中で見ていた幻。
そう分かっても……
唇をそうっと触る。
例え夢であっても、例え一瞬であっても、お姉ちゃんと――お姉ちゃんに触れたここ。
感触は覚えていない。たぶん柔らかいんだろうと思うし、きっと溶けてしまうくらい熱いのだろう。
でも、実際に触れたことが無いから分からない。
まだ覚醒しきってない頭でぼんやりとお姉ちゃんのことを考えている私に、カアッと、鳴き声が――
女「――ん……え?」
窓を見る。真っ赤かだった、外は。
夕暮れ黄昏に焼かれた町並み。まるでニンジンがどこかに隠れていそうなほど綺麗に染まった町。これ程綺麗に染まっていたらアリスのウサギも思わず足を止めてしまうんじゃないか、そう思えた。
もう日暮れ。カラスもお家に帰る頃合い。
何時間寝たんだ、私? いや下校に結構な時間を取られるのだから、そんなに寝てないな。二、三時間といったところか。昼寝にしては長かった。
女「……ん」
寝る前から掴んでいたネックレス。
それをまじまじと見つめる。寝てても放さなかったそれ。
思い出されるのは夢の中のこと。お姉ちゃんの言っていたこと。
お姉ちゃんのことが好きだと、私は、認めて――いいや、自覚してしまった。
そこまでくると、再三の疑問、切りとれない不審らがぐるぐると私の中でとぐろ巻く。
私が好きなのはどのお姉ちゃんなのか。
女「はあ……」
ため息を吐き宙空を睨む。
間違いなく好きなのはあの頃――女子高生時代の構ってくれて一番よく知っているお姉ちゃんなのだが……。
時間は戻らないのだから、どうしようもない。戻ったところで……って話だが……。
そもそも時間軸の違う一人物が同一であるか否かとは考えて分かることなのか。今のお姉ちゃんと昔のお姉ちゃんは同じなのか。極端だが例えば、二十歳の人を好きになったとして、はたして赤子時代のその人に懸想するかと。少なくとも私はしない。まったく違う人物であるし、その赤子時代どういう子だったか知らなかったとしたら、好きになる要素が見つけられないから。懸想するやつはただの変態か、もしくは、ウチどんなあんたも好っきやねんとかほざきやがる馬鹿のどちらかだ。
てことで、今のお姉ちゃん。昔の彼女のことを知っているといっても、今の彼女のことは何ら一切これっぽちも知らない。何度も言ってきた通りだ。
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