メイド「私の嫌いな貴方様」
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62: ◆TEm9zd/GaE[sage saga]
2017/04/04(火) 21:59:15.80 ID:3qoU9Sd70
女「………………、…………」

ドクンドクンと心臓がうるさい。
早鐘のように鼓動が脈打ち、汗がだらだらと溢れでる。呼吸がままならない。苦しい。

触れられたくなかった劣情。今まで憧れだと言い聞かせた下卑た愛情。


小さい私の面倒をみてくれたり、遊びたい盛りの私に構ってくれたいくつも年上のお姉ちゃんに対して恋愛感情を持つなんて自分でもおかしい……そう自覚している。

だから自分の気持ちに蓋をして、忘れようとした。


好きだから。彼女のことを思い出すと辛いし、変わってしまった姿なんて見たくない。
今でも、お姉ちゃんからもらったネックレスを肌身離さず持ち歩いているのがその証拠。

思い出の中のお姉ちゃんにしがみついている――惨めったらしく初恋にしがみついてるだけ。

辛いったりゃありゃしない。忘れられるものなら忘れたい……が、それも許されない。だって、お姉ちゃんと再会してしまったから。
忘れるために遠い高校に通おうとして、そこに忘れたいひと本人がいる。



女「バカじゃないの……?」


やっとのことで絞り出した言葉がそれだった。

グサリ、と。
その嘲りは自分自身を傷つけた。

お姉ちゃんをいつまでたっても求めている私も馬鹿だし、忘れようとして空回った私も馬鹿。


馬鹿な私ばかり。本当に嫌になるよ。


依然として左右にはお姉ちゃんがいて、私を抱きしめてくれている。

その二人に聞こえるようわざと声を大きくして……


女「好きだよ――ずっとずっと好きだったんだよ!!」


ああそうさ。隠してたもんを見つけられたんだ。白状するさ。



好きだよ。大好きだ。世界で一番愛してる。
何年も片思いするくらいお姉ちゃんのことを思っている。

それにだ……認めるよ、私は馬鹿だ。
お姉ちゃんの妹に向けるような愛情に、何をとち狂ったか性愛で返そうとするほどにはな。


私の言葉を聞いたお姉ちゃんたちが満足そうに笑みを顔に湛える。

すると同時に――


女「は……ははっ……」


目の前の摩可不思議現象に思わず渇いた笑い声が洩れた。

お姉ちゃんだ。目の前にお姉ちゃんがもう一人。


その彼女は幾重にも像が重なり、私のよく知っている頃にも見えたし、再会して大人になっていた彼女にも見えた。なんならあまり覚えていない小学生時代のお姉ちゃんでもあった。
確かに一人なのに、そのお姉ちゃんはいろんな年歳のお姉ちゃんに見えた。

なんだこれデタラメだ。

そのお姉ちゃんが段々と顔を近づけてくる。
体は二人のお姉ちゃんに押さえつけられているため動かない。が、そんなことどうでもいい。もとより抵抗する気はないのだから。

私の好きなお姉ちゃん。私の知らないお姉ちゃん。私の覚えていないお姉ちゃん。
全員、同じお姉ちゃん……。


彼女はなんのためらいもなしに唇を重ねてきて――


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